パン屋の独立・開業・稼ぎ方

「パン屋」の独立・開業・稼ぎ方

 

今回はパン屋の独立・稼ぎ方について書いてみようと思います。

パンが好きな人というのは多いかと思います。むしろ主食はご飯よりパンという人もいるでしょう。

それほどまでに日本人に好まれているパン。お店にいけばバリュエーション豊かなパンが並び店内からも

焼き立ての良い香りが漂ってきます。またパン屋さんによってもそのコンセプトは様々。

誰にでも1つはお気に入りのパン屋さんというのがあるのではないでしょうか。

パン屋を開業するには

パン屋を開業するには保健所への営業許可申請が必要になります。またそれに伴い食品衛生責任者設置が

必要になります。衛生制菓子や調理師資格があればそれを持って開業する事が可能です。それらの資格が

ない場合でも保健所が実施している食品衛生責任者資格の講習を受ければ取得する事が出来ます。

その他にも人を雇用する上では労基署への届け出や保険関係でも社会保険庁での手続きが必要です。

パン屋の必要設備

パン屋での必要設備については開業時のコンセプトによって多少異なるものの、一般的なパン屋としては

オーブン・ミキサー・冷凍冷蔵庫・作業台・ホイロ・フライヤー、型、鉄板、パネトン等が必要になります。

また保健所の許可申請時を考えると湯沸かし器・2槽シンク・換気扇・ガスコンロ・ガス台・ゴミ箱等も

用意しておく必要があります。新品で機器を揃えるとなると1000万円を超える事も珍しくなく、

中古や新古品・オークションやリサイクルショップ・小道具屋・居抜きから調達する事も検討する必要が

あるでしょう。特にパンの設備はそれほど需要が多いものでもなく中古であれば新品の2~4割程度の価格

で購入できる場合もあります。もちろん劣化具合や動作状況等の程度をきちんと確認する事が必要で、

中古品でもある程度高額な費用がかかる為、不良品と判明した場合に処分するとなると処分費もかかり

新たに設備を購入するとなると結果的に新品を購入するより多額の費用がかかってしまうケースも

考えられます。開業時には多額の費用が掛かるため、中古を上手く活用するようにしたい所です。

またリースという手もありますがパン屋の開業時は特に売上げが思うように上がらない事も多く、

毎月のリース料の支払いが響いてくる事もあります。出来れば中古品でも良品を揃えるようにし、

開業時のコストを抑えるようにしましょう。

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パン屋の内装工事

パン屋にとって設計・内装工事はとても大切です。パン屋にとって重要な要素の中にコンセプト

があり設計や内装からお店のコンセプトを感じてもらえるようなお店作りが必要になってきます。

パン屋と言ってもブランドショップを思わせるパン屋・フランスの田舎の雰囲気を醸し出すパン屋・

海辺をイメージする爽やかなパン屋・木材を基調とした落ち着いた印象のパン屋・和の空間を演出した

パン屋など店主のイメージによって様々なコンセプトのパン屋があります。

内装業者に依頼するとしても相見積もりが基本となり必ず複数の業者に見積もりを取った上で

自店にとって最適な業者を選択したい所です。特にパン屋は厨房面積や機材設置も他飲食と比較すると

多少特殊な事から前例としてパン屋の内装工事を請け負った経験のある業者に依頼する事が望ましい

でしょう。パン屋の内装工事の坪単価としては30~50万円程度が一般的。また厨房面積もテナント

の半分程度を占める事が多く、販売スペースをどのくらい確保できるのかを前提として面積の使い方

を考えなければなりません。販売スペースを多く確保できないとなると日中にも作業をしながら

欠品が起こるたびに焼かなければならない等、作業が非効率になる事も想定されますし、店内に置ける

商品数が限られてくる為、売上げにも直結します。また厨房面積が広くなるという事は当然電気や給排水

の工事費用も通常の飲食店より多少高めになる傾向があります。その他にもスタッフの人数と広さが適性か

・顧客とスタッフの店内動線・売り場の面積やショーケースの大きさ・作業場の作業効率・ショーウインドや

イートインスペースの有無など、実際の販売状況を具体的に想定して工事を進めていく必要があります。

また細かい話で言えばパンという商品の特性上、またパン屋の方角は南向きではなく北向きや東向きが

良いでしょう。衛生管理上、西日が差してしまうような店舗や内装施工は商品にとっても避けるべきかと

思います。

内装工事費が坪30万として20坪で600万・中古機材使用で500万・不動産取得費が保証金・

前家賃などで250万として計1350万円。その他にも開業時には材料取得費や広告宣伝費・

従業員募集広告・レジや調理器具や什器等の備品類を考慮すると1500~1800万円程度が

一般的なパン屋の開業費として考える事が出来ます。開業時のコストを抑える為にはやはり内装工事費

や機材の購入代金が大部分を占める為、優良な居抜き物件を探し出す事を検討に入れる必要もあるでしょう。

また内装にしても全て業者任せにするのではなく自分で施せる内装部分は自分でやる位の気概は必要な

ように思います。

パン屋の開業立地

開業立地ですが集客を考えると一等地での開業を考えてしまいそうなものですが、パン屋という

商品を考えると必ずしも好立地である必要はなく二等~三等立地でも十分に集客は可能かと思います。

むしろそれよりも自店の核となる商品や店舗のコンセプトに合った立地を選択するべきと言えるでしょう。

例えば天然酵母やオーガニック等の健康志向系であれば主婦等をターゲットに住宅街を選択した方が

良い場合もありますしベーカリーカフェのようなカフェやイートインスペースを併設したパン屋で

あれば繁華街が向いているケースもあるでしょう。もしくは惣菜系やハード系のパンを中心に揃える

のであればサラリーマンを対象にしたオフィス街が向いている場合もありますし、国産小麦や天然素材

等を利用しオリジナルの創作パンで集客を図るのであればロードサイドでも車で駆け付けてくれる顧客が

いるかもしれません。単価が安くボリュームを重視したパン屋であれば学生が帰宅途中に買いに来る

イメージも出来るでしょう。

もちろん普段の人通り人数や周囲の競合店の多さ・主要駅からの動線等のマーケティング要素も欠かせま

せんが、それ以上に自分のイメージする客層や環境が自店のコンセプトと合致しているかどうかを中心に

考える必要があると思います。確かに人口動体や店の視認性・商圏などを見極める事も肝心ですが

それらのマーケティング要素を重視するのは主には工場での大量生産で多くの販売量を目的とした

大手パン屋が重視する事であり個人店のパン屋はそこだけに捉われるのは間違いかと思います。

むしろ個人店が大手の真似事をしたのであれば資本力でかなう筈もなく撤退を余儀なくされるケースも

あるでしょう。

またパン屋においてマーケティング要素よりもコンセプトが重要視されるというのは客層に特徴があるから

です。一般的なパン屋においての客層は男性:女性の比率は2:8~3:7の比率で構成される事が多く

殆どが女性客層が多い事が分かります。女性であれば大手パン屋にない素材に拘りのあるパン屋や

オリジナルの創作パン屋・自分のお気に入りのパン屋があれば多少遠くても足を運ぶ事が多いでしょう。

他店との商品の差別化やコンセプトを明確に打ち出していれば少々難のある立地でも集客は可能かと

思います。パン屋にとっての好立地とは駅近や大型商業施設内でもなく自店のコンセプトを十分に発揮

できる環境を備えた立地であるとも言えるでしょう。

セルフ方式か対面方式か

パン屋を開業する場合、顧客がパンを購入するにあたってセルフ方式にするか対面方式にするかの

選択をする必要があります。セルフ方式の利点は顧客が自分の好きなパンをじっくりと見ながら商品を

選択できる所にあります。パン屋の魅力の1つとして色とりどりの豊富なパンの中から迷う楽しさという

魅力もある為、この辺りもセルフ方式の利点と言えます。その他にも店員と多くを接する必要がない・

パンを自分のペースでゆっくりトングで取る事が出来る・対面だと来店した時に購入する強制感が

あるがセルフの場合はそのような雰囲気がしにくい等のメリットもあるでしょう。逆にセルフの難点を

言えば販売スペースにパンが露出している為、不衛生と感じる顧客がいる事や手に荷物を持っている時

などは購入しずらい等のデメリットもあります。

逆に対面方式の利点はやはり店員とパンの素材や味について色々コミュニケーションが取れる・自分で

取らなくとも店員が包装してくれる・衛生的に管理されているイメージがある等のメリットがあると

言えるでしょう。

昨今ではコミュニケーションが希薄化している事もあり人との関わりを必要以上に求めない傾向が

あります。また若年層を中心に自由度が高い店舗の方が支持されやすい風潮もあり、実際にセルフ方式と

対面方式を比較しても圧倒的にセルフ方式の方が購入しやすいという顧客が多いものです。ただし

セルフ方式の場合には対面と比較すると販売面積を多く必要とするのでその分厨房面積を工夫する等の

配慮が必要になってきます。またセルフ方式の場合には商品の品揃えが目に付きやすく、ラインナップの

充実度や商品の欠品を起こさないようにする配慮も必要です。小規模なお店であればあるほどショーケース

を外から見える店頭に置いて対面方式を採用しているパン屋が多いように思いますが、セルフ方式を

採用するのであればテナント坪数の確保や厨房面積・売り場レイアウトの工夫が大切になってきます。

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パンのバリュエーション

パン屋である以上はどのようなパンを販売していくのかを決めていかなければなりません。

どの店舗も個性豊かでどのようなパンのバリュエーションを揃えているかは千差万別ですが

人気のパン屋に共通している事があります。それは主力となるような大人気のパンが1~2つ

ある事です。それは店舗によってはメロンパンであるかもしれないしカレーパンであるかもしれないし

惣菜パンであるかもしれません。店舗によって主力のパンはそれぞれですが、1つの人気商品を

誕生させる事により顧客からしてみれば「あの美味しいパンが食べたい」という気持ちが来店動機に

繋がり、そこから他のパンも数個合わせて買ってくれるというケースが多いのが人気店の特徴でしょう。

素材や具材・食感や大きさ・ネーミングなど拘りのある人気となるパンを1~2つ誕生させる事で

引いては他のパンの売上げを伸ばす事もでき相乗効果が生まれます。また評判の高いパンがあるだけで

固定客やリピーターが付きやすいというのも特徴的です。人気のパンについては量感陳列を試したり

入口付近に置き目立つ工夫をする・メッセージボードでPRする等、どのパンがその店のウリなのか

という事を一目瞭然で分かるようにしておきましょう。

また他のパンのバリュエーションについて考えてみると日本人が好きなパンはフランスパン・バゲット・

食パン・惣菜パン・菓子パン等が上位として挙げられます。個性を求めるのは良いですがこのような

売れ筋パンを多く外す事はリスクが高いと言えます。店舗独自のオリジナルのパンを主力として販売して

いく一方で併せてこれらのパンを販売していくのがベターとも言えるでしょう。

個人店のパンの種類というのは50~70種類が平均的。例えば食パン・ハード系・デニッシュ・

菓子パン・惣菜・サンドイッチ・焼き菓子等を8~10種類ずつくらい平均的に揃えているのが

よく見かけるパン屋さんではないでしょうか。もちろん店舗のコンセプトによって取り扱う種類は

様々ですがその内の2~3割は季節や時間帯ごとにパンの種類を入れ替えるくらいの工夫は必要な

ように思います。例えば旬のフルーツを取り入れたパンをバリュエーションに組み込んだり、時間帯に

よって朝にはフルーツ系・昼過ぎにはサンドやキャッシュ系・夜には惣菜系を多めにするなどシーズンや

時間帯別の客層を意識してみる事も大切です。前述したようにパン屋に来店する顧客は商品を見て

「迷う事」でも楽しみを感じています。年間通してずっと様変わりしないようなパン屋であれば

他のパン屋に浮気されないとも限りません。常にどのようなパンが売れてどのパンが伸びていないのか、

店内のパンを観察しておくと共に定期的にバリュエーション割合を変更する等の工夫が必要になってくる

でしょう。

また原価計算も大切です。いくら品揃えが良いと言っても原価が高い商品ばかりでは採算が合いません。

原価の高い商品と低めの商品をバランスよく配置しトータルの原価を調整する必要があります。

一般的にはパンの原価率は30~35%前後のものが多いかと思いますがトータルの原価率が高い

ようであれば食事系など日常食となるパンは出来るだけ原価は下げずに、バゲット系や焼き菓子など

原価の低い商品で調整していくようにします。顧客のニーズを見極めて品揃えを考えていくように

したい所です。

パン屋の売上げ

パン屋の売上げについて考えてみます。

客単価が600円。客数は平日60・土日が85人と設定。坪数は15坪。賃料は坪1万で15万円。

従業員は3人(社:給与20万・アルバイト2人:給与各5万)

平日:600円×60人=36000円(日商) ×22日=792000円

土日:600円×85人=51000円(日商) ×8日=408000円

月商=792000+408000=120万円

120万円×12か月=14400000円(年商)

夏季7~9月:売上げ-20%と仮定。24万×3か月=72万円

冬季12月・2月 クリスマス・バレンタイン等イベント時+25%と仮定 30万×2=60万

14400000-720000+600000=14280000÷12か月=

119万円(平均月商)となります。

パンの平均原価率が30%と仮定。119万円ー36万円=83万円

人件費が25%。83万円-30万円=53万円

賃料が15万円 53万円ー15万円=38万円。

広告費4万:諸経費5%:水道光熱費5%で仮定。=38万円ー4万ー約5.5万円ー約5.5万円

=23万円の営業利益となります。

パン屋は厨房面積を大きく取る為、賃料が負担となる可能性があります。

多くの売上げが見込める店舗でなければ10%以内に収める事も難しいでしょう。

かと言って坪数を狭くすれば販売面積も限られ、10坪以内のパン屋では内装工事でも

業者からNGが出るケースもあります。

また夏に売上げが落ちる事も想定していなければなりませんので季節のフルーツを取り入れた

パンを配置したりパン以外のアイスクリーム等の販売・口当たりの良いパンの製造など

工夫を凝らさなければなりません。またケーキ屋ほどではないにしてもやはりクリスマス

やバレンタイン等のイベント時にどれだけ売上げを底上げ出来るかという点も年間を通して

みると大事な販売時期になります。また前述したような目玉商品と言える自店の主力商品が

出来ているかどうかも集客に大きく影響してくるでしょう。

パン屋の開業について少し書いてみました。実際にパン屋というのは一般的には大儲けできる

といった業態ではありません。また寝る間を惜しんで仕込みをしているような従業員も多い

でしょう。パン屋の経営を成り立たせるのは簡単ではありませんが強い信念を持って

独自のコンセプトで勝負しているパン屋は多く、個人的にもこのようなパン屋は好きです。

今度の土日にでも久々にパン屋に足を運んでみたくなりました。それでは今日この辺で。

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