ケーキ屋開業の成功のポイントは?資格や設備・集客方法まで徹底解説

今回はパティシエ・ケーキ屋の独立・開業について挙げてみたいと思います。

疲れた時などはふとケーキを食べたくなる事がありますね。

ケーキ屋さんではショーケースに種類豊富なケーキがずらりと並んでいます。

クリスマスや誕生日など、よく行くケーキ屋さんがあるという方もいるでしょう。

洋菓子店には多くのパティシエがおり、これからお店を開きたいという方もいるのかもしれません。

今回はそんなケーキ屋さんの開業について触れてみます。

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ケーキ屋を開業するには

ケーキ屋を開業するのに、資格は必要なのでしょうか。

実際には、ケーキ屋開業のためには資格等は必要ありません。

ですが他飲食店と同様に、最低限の必要な許可や手続きはありますのでそれを挙げていきます。

 

食品営業許可

ケーキ屋さんを開業するには、まず保健所の食品営業許可を得なければなりません。

一般的な飲食店のように「店で調理をして食品を販売する」場合にはこの営業許可を得る必要があり、特にケーキ屋の開業においては「菓子製造業」の営業許可が必要です。(カフェ等では「喫茶店営業許可」の場合もあります)

特にケーキ屋のような菓子製造業の場合には、共通基準の他にも特定基準として以下のような規定もあります。

施設及び区画:施設は製造、はっ酵、加工及び包装を行う場所、製品置場その他の必要な設備を設け作業区分に応じて区画すること。

また作業場外に原料倉庫を設けること。

機械器具:製造量に応じた数及び能力のある混合機、焼がま、平なべ、蒸し器、焙焼機、成型機その他の必要な機械器具類を設けること。

また必要に応じ冷蔵設備を設けること。

 

保健所が施設基準に合致しているか等を事前に確認し、「営業許可証」を交付されてから営業を開始できる事になります。

自分で申請をするのが基本ですが、ケーキ屋開業時の機材業者さん等が相談に乗ってくれる事もありますので、事前にきちんと申請をしておきます。

 

食品衛生責任者

また飲食店を開業する際には食品衛生責任者の設置も必要になります。

ケーキ屋さんのように食品を取り扱うお店では、施設ごとに1名以上の食品衛生責任者を配置する必要があります。

食品衛生責任者を配置する意味は、店舗内で食中毒などが起きないように食品衛生上の管理運営を行うためです。

ですが食品衛生責任者は通常であれば講習を1日程度受ければ取得することができますので、さほど心配はいらないでしょう。

また栄養士や調理師・製菓衛生士資格などの資格を取得している人は、食品衛生責任者の資格は不要です。

 

防火対象物使用開始届出

火災予防条例により、テナント等を借りて事務所や店舗等を開く際には、消防署への申請が必要です。

ケーキ屋さんを開業する際には内装工事で業者さんが入るかと思いますので、内装業者さんにお願いをしても良いでしょう。

 

開業届

ケーキ屋に限らず、事業を開始する際には税務署に対して開業届を提出します。

開業届を提出することで青色申告ができたり屋号の口座が作れるといったメリットがあります。

税務署に持ち込む他にも、郵送での提出も可能です。

開業届を提出する際には開業後一か月以内に提出をするようにしましょう。

 

ケーキ屋の開業に必要な設備は?

ケーキ屋の開業に必要な設備にはどのような物があるのでしょうか。

実際にケーキ屋を開くのにお金がかかるのは、内装費と設備費です。

それではケーキ屋にはどのような設備が必要になるのでしょうか。幾つか挙げてみます。

 

 厨房設備

  • オーブン
  • ミキサー
  • 冷凍冷蔵庫
  • 作業台
  • 冷蔵ショーケース
  • 陳列棚
  • ショックフリーザー
  • リバースシーター etc…

 

 道具・備品

  • はかり
  • ボウル
  • 粉ふるい
  • 包丁・ナイフ
  • 焼き型
  • ホイッパー
  • へら
  • 計量カップ・スプーン
  • ケーキトレイ
  • 絞り袋
  • ユニフォーム
  • パッケージ
  • 電話
  • レジ
  • PC
  • FAX etc…

設備等においては新品で揃えようとすると、800~1000万円といった多額の資金が必要になります。

ケーキ屋開業時には、その他にも物件取得費や内装費もかかる為、トータルで2000万円以上のコストがかかる事も珍しくありません。

 

そのためこれらの厨房設備においては、コンディションの良い中古設備を調達したり、リース機材を利用する・居抜き物件を検討する等の工夫も必要です。

中古であれば400~600万円程度での購入も検討できますし、居抜きであれば設備譲渡費も低く抑えられます。

ただし中古機材や設備譲渡の場合には、経年や消耗度によって状態に善し悪しがありますので、しっかりと確認してから購入を検討しましょう。

 

ケーキ屋の開業に資格は必要?

ケーキ屋さんを開業するのに資格は必要なのでしょうか。

例えば洋菓子系の資格では以下のような資格があります。

  • 製菓衛生士
  • 菓子製造技能士

 

ですが上記でも挙げたように、ケーキ屋さんを開業するにあたり資格は必ずしも必要という訳ではありません。

製菓衛生師や菓子製造技能士を取得していなければパティシエとして独立できないという事もありませんし、ケーキ屋を開業できないという事もありません。

特別な独占業務がある訳ではないので、取得していないからと言って業務内容が制限される事もないでしょう。

 

ですがこれらは国家資格であり、資格を取得していると洋菓子店などで一定レベルのお菓子作りの技術や知識を持つという証明にもなります。

そのため開業前にケーキ屋で修行をするとしても、面接時に積極的な姿勢をアピールできます。

また開業時の食品衛生責任者の講習を受ける必要もありませんし、パティシエとして海外で働く場合などはビザ取得に有利に働く可能性もあるでしょう。

誰でも受験できる訳ではなく受験資格がありますので、時間に余裕のある方は資格の取得を検討しても良いかもしれませんね。

 

ケーキ屋の開業資金はいくら?

ケーキを開業する場合、その資金はどれくらいかかるのでしょうか。

ここではパティシエとして独立し、ケーキ屋を開く場合の開業資金をシュミレーションとして考えてみたいと思います。

 

 開業資金内訳

  • 物件取得費:200万円(面積15坪/賃料18万円)
  • 内装費:600万円(坪40万)
  • 厨房設備費:800万円
  • 材料費:60万円
  • 看板代:30万円
  • 開業前広告費:40万円
  • 備品・消耗品費:10万円

 

資金項目 金額
物件取得費 2000000円
内装工事費 6000000円
厨房設備 8000000円
材料費 600000円
看板代等 300000円
開業前広告費 400000円
備品・消耗品等 100000円
合計 17400000円

 

シュミレーションでは、ケーキ屋の開業資金は1740万円という計算になります。(※シュミレーションであり開業資金は店舗によって異なります)

 

先ほどにも挙げたようにケーキ屋では大型設備も多く、特に厨房機器に多額の資金が必要になります。

また内装としてもケーキ屋の場合には女性を意識した店内内装を検討するケースが多く、坪40~60万円程度の内装工事費が必要になります。

物件取得費としても厨房スペースと売り場面積を確保するとなると、オペレーション上からも10坪以上~の広さが必要になります。

 

またケーキ屋を開業する際、経営者によっては店への想いやこだわりが強いあまりに、最初から設備や内装への初期投資をかけ過ぎる傾向があります。

しかしあくまで主役はケーキ等のスイーツです。

最初から設備・内装に大きなお金をかけるよりはシンプルな設備やディスプレイに留め、後々の経営状況に応じて内装を付け足していく方が良いでしょう。

いずれにしてもパティシエとして独立し洋菓子店を開業をする際には多額の資金が必要となりますので、融資制度を利用するなど開業前の綿密な事業計画が必要と言えます。

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ケーキ屋に最適なテナント・立地とは

ケーキ屋にとって最適なテナント・立地とはどのような場所でしょうか。

立地としては繁華街や商店街・ビジネス街や住宅街・ロードサイドなど様々な立地があります。

一般的な飲食店におけるテナントと言えば、やはり繁華街や商店街をイメージする方が多いでしょう。

ケーキ屋においてもやはり人通りが多く視認性の高い物件は有利ですので、その意味では繁華街等を選ぶのも良いと思います。

 

ですが現実的に言えば、ケーキ屋の場合には一等地ばかりを狙うのは得策とは言えません。

ケーキ屋を含め一般的な飲食店の場合、賃料は売上の10~15%程度が目安です。

特にケーキ屋の場合には、材料の原価率が30~40%となるケースも多く人件費もかかる事から、最初から賃料の高い繁華街等の立地を選ぶのは適切ではない場合もあります(立地/賃料のバランスに寄る)。

そのため二等地~三等地を含めて、候補物件の中から徐々に開業立地を絞っていくようにします。

 

またケーキ屋やスイーツ店の場合には、その主要客層は「女性」です。

女性は特に味にこだわりが強いため、気に入ったスイーツがあれば多少遠方でも通ってくれる事も多くあります。

そのため住宅街やロードサイド店舗でも十分に検討候補に入れる事ができます。

また使用する材料によってはネット販売等も検討できるでしょう。

ケーキ屋を開業する際には、自店のケーキをどのようなお客さんが購入してくれそうか、その客層のイメージを膨らませた上でテナント立地を選ぶようにしたい所です。

 

また自店のコンセプトからテナントを決定する場合もあります。

自分がイメージするコンセプトをうまく表現できそうな立地を選択するという事です。

ケーキ屋や洋菓子店と言ってもそのコンセプトは様々で、カフェ併設の店舗やテイクアウト専門もあります。

 

例えば天然素材を使用した店舗であればオフィス街よりは主婦の多い住宅街の方が適しているケースもあるでしょうし、低価格をウリにした回転重視のケーキ屋であれば人通りの多い商業地が望ましいケースもあるでしょう。

もしくはネット販売であれば厨房スペースのみで物件取得費を抑えられるテナントもあります。

自分がどのようなコンセプトで商品を提供していきたいのかを具体的にイメージする事で、自然と適正立地が見えてきます。

 

またその他のテナント選びの方法として、スイーツの提供品目を絞る事で賃料を抑える事も検討できます。

例えばパンケーキ専門店やオリジナル創作ケーキ・野菜や海鮮を使用したケーキ・アレルギーを持つ顧客に対応したケーキ・シフォン専門店など、数種類の商品に絞る事により狭い販売スペースを有効に使うという例です。

品目を絞る事で他店との差別化を図る事も出来ますし、固定客・リピーターが付きやすいという特性もあります。

ただし注意点として、ケーキ屋に来店する客層の来店動機としては「どのケーキにするか迷う事が楽しい」と感じている部分も多く、ショーケースに並ぶ豊富なケーキのバリュエーションや色とりどりのスイーツの美しい見栄えにケーキ屋の魅力を感じている部分も大きいものです。

そのため商品品目を絞る際には、顧客を飽きさせない工夫も必要になってくるでしょう。

 

またその他にも、販売場所のテナント賃料が高い場合には「販売スペース」と「工房」を分けて経営をする事も検討出来ます。

例えば販売スペースは一等~二等立地に構え、工房は空中階等の賃料の安い空きスペースを利用すればテナント賃料を抑える事も検討できるかもしれません。

工房まで賃料の高い一等立地にある必要はないという事です。

この形態の場合、保健所の許可が複雑に場合もあるかもしれませんが、例えば工房として利用する時間以外はそのスペースをケーキ教室やパン教室の場として利用し、生徒さんからレッスン料を得る事でコストダウンを計る事も考えられます。

また更にコストダウンを図るのであれば空中テナントや地下テナントで開業し、あえてネット通販や宅配専門店として顧客に販売をしながらスイーツ教室を並行して行う事で賃料の問題点をカバーする事も考えられるでしょう。

 

ケーキ屋開業の売上には立地が大きく影響します。

物件選定にはじっくりと時間をかけ、自信を持って開業できるテナントが見つかるまで根気強く物件探しをしていきましょう。

POINTケーキ屋のテナント・立地は集客に大きな影響を与えます。
開業後に立地を変える事は困難です。慎重に自店に合った立地を選択するようにしましょう。

 

ケーキ屋の売上・利益は?

ケーキ屋さんの売上はどれくらいを見込めるのでしょうか。

ここではシュミレーションとして、ケーキ屋さんの売上を考えてみたいと思います。

 

 売上条件

  • ケーキ価格:300円(カットケーキ)
  • 客単価:900円
  • 1日客数:45名
  • 商品構成:ケーキ/焼き菓子 6:4
  • 25日営業
  • 月商:900円×45名×25日=1012500円
  • ※季節・イベント等により売上に幅がある為、売上変動を考慮
  • 12月 (クリスマス):+60%=1620000円
  • 1~3月 (進物・バレンタイン・ひな祭り・進学祝い等):+30%=1316250円
  • 7~8月 (夏場による売上減):-30%=708750円
  • 平均月商:約109万円 ((1012500円×6か月)+1620000円+(1316250円×3か月)ー(708750円×2カ月)÷12=1088437)

 経費条件

  • テナント賃料:130000円(テナント13坪:厨房8/売り場5)
  • 原材料費:305200円(売上の28%)
  • ※平均原価率:28%(生ケーキ/原価35%  焼き菓子/原価20%)
  • 人件費:272500円(売上の25%:従業員/アルバイト)
  • 水道光熱費:54500円(売上の5%)
  • 通信費:10000円(HP運営費等)
  • 消耗品 (包材・ラッピング等):32700円(売上の3%)
  • 雑費・諸経費:21800円(売上の2%)

 

売上項目 金額
平月 1012500円
12月 1620000円
1~3月 1316250円
7~8月 708750円
平均売上 1090000円

 

経費項目 金額
テナント賃料 130000円
材料費 305200円
人件費 272500円
水道光熱費 54500円
通信費 10000円
消耗品等 32700円
雑費・諸経費 21800円
経費合計 826700円

 

【売上合計】1090000円ー【経費合計】826700円=263300円

シュミレーション上では、263300円の営業利益が見込める可能性があります。(償却前利益)

 

ざっくりと計算してみましたが、やはりケーキ屋単体では経営が厳しい店舗も多いように思います。

特に平常時の売上を工夫を凝らして底上げできるか・イベント時の顧客をどれだけ次シーズンのリピーターに繋げられるかという点がポイントになってくるでしょう。

 

例えば誕生日ケーキを購入した顧客には毎年バースデーカードの送付・パーティー会場との提携・父の日や母の日向けの似顔絵ケーキの制作・売上げが落ちる夏場にアイスケーキの提供・七五三に子供が喜ぶキャラクターケーキや3Dケーキの受注予約など、ケーキや洋菓子の需要はクリスマス以外のイベント時にも意外と転がっています。

その他にもひな祭りや花見・入学式や卒業式・お中元や敬老の日・お月見や行楽シーズンなど、イベント時のケーキ需要を掘り起こしていく努力が必要になってくるでしょう。

 

また店内販売だけでなく、ネット販売や通販・宅配販売等で売上げを底上げする仕組み作りも必須となってくるように思います。

特に生菓子部門はその鮮度の特性から、まだまだネット販売が遅れている風潮もあり今後の課題かと思います。

焼き菓子などは日持ちするものも多いのでネット販売にも適応しやすく、原価率も低いので焼き菓子の割合を高める事は利益率にも影響してきます。

 

また個人のケーキ屋の場合には、昔からショーケースを全面に出した昔ながらの集客方法である事が多く、賃料の高い好立地に出店せざるを得ないケースも多いです。

そのため他の集客方法も十分に模索する必要があり、例えばパンとの併売を考えたり特産物を使用した商品や店内のイートインスペースの設置・SNSからの集客・カフェの併設など、売上を上げる為の工夫が求められます。

 

特にケーキ屋においては、「自分が作りたい商品」と「利益を上げるための商品」は異なる場合が多くあります。

パティシエとしてのこだわりはもちろん、経営者としても売上を意識した商品構成を心掛けるようにしましょう。

 

パティシエの独立時の年収は?

パティシエの独立時の年収はどれくらいになるのでしょうか。

これは人や店舗によって異なりますが、開業時は300~400万円代の年収に留まる経営者も多いかと思います。

ケーキ屋の開業時というのはまだ認知度も低く、リピーター等も付いていません。

また店内のオペレーションが上手くいかない事や、適性な材料費・廃棄率等が定まっていない事もあり、売上にもバラつきが生じます。

開業から3~5年目辺りから緩やかに売上が安定していく店舗が多く、パティシエとして独立時からすぐに軌道に乗れる経営者というのは僅かと考えて良いでしょう。

 

またご存知の方も多いように、一般的にはパティシエの年収というのは低めである事も多いです。

それは他業種と比較しても原材料費が高めである事や、テナントもある程度のスペースが必要で賃料がかかる事で、その分人件費にシワ寄せがくる為です。

 

パティシエと言うと聞こえは良いですが、初任給が13~14万円程度であったり、年収ベースで200万円台という人も珍しくありません。

その上パティシエは長時間労働が多い事から、せっかく育てても辞める人も出てきます。

またあまりにも給与が低すぎると離職率が高くなる事から、経営者としてはコストバランスには常に注視しておく必要があります。

開業当初から高い年収が築ける人は僅か。

多くの人は独立後1~2年は赤字の状態が続くこともあります。

自身のモチベーション維持や当面の運転資金確保など、慎重な運営が求められます。

 

パティシエの独立までの修行は厳しい?

ケーキ屋さんというのはロマンティックで可愛らしいイメージもありますね。

クリスマス等はイルミネーションも点灯し、さぞパティシエは華やかな仕事なんだろうとぼんやり考えてしまいそうです。

 

ですがそんなイメージとは逆に、パティシエ業界は体育会系でもあります。

店によってはサービス残業100時間なんて所も珍しくなく、年間休日も100日を超えない店も多いでしょう。

クリスマス・正月・バレンタイン等の繁忙期は店に泊まり込みで働いている従業員も多いものです。

 

またパティシエ業界は女性にも人気ですが、女性がこの業界に乗り込んでまず挫折するのが力仕事。

砂糖や小麦粉なんかだけでも20キロ前後ありますし、ずっとボールを持ちながら泡立てするだけでも重労働です。

また200度近い鉄板で生地を焼き続ける事もありますし、火傷も頻繁にします。

女性パティシエでも特別扱いしてくれる事はなく、仕事内容としても男性パティシエとほぼ変わりません。

熱い窯からケーキを取り出したり火傷防止のため夏でも長袖を着ないといけない店もあります。

 

パティシエとして修業をするにしても、朝出勤したらまず始めるのが店の掃除。

ケーキ屋というイメージもあり、店内の清潔感には気を使います。

また最初の内は自分が希望している仕事をさせてもらえない事も多いです。

ケーキ作りはもちろん、材料にも多くは触らせてもらえません。

 

またケーキという華やかなお菓子のイメージとは異なり、地味な部分の仕事でもあります。

スイーツは鮮度も大切なので材料にも逐一状態に注意しておかなければなりませんし、湿度や温度にも気をつけなければなりません。

大量に一括仕入れする事が難しいので売れ行きと在庫量の調整は小まめにチェックする必要もあり、細かな在庫管理は事務的な一面もあります。

私たちがショーケースの前で綺麗なスイーツを見て心が高揚している裏側では、従業員さんたちの普段からの徹底した商品管理があります。

 

中には製菓学校等に入学し、専門的な知識を学んでからパティシエとして独立したい人もいるでしょう。

学校に通えば、菓子作りの技術以外にも食品衛生学や食品学、栄養学、色彩学、菓子デザイン、接客術など様々な事を学べます。

 

しかし卒業者から言わせれば、この学校での知識やレシピ作りは実際のパティシエ現場ではかえって邪魔になる場合もあるようです。

いくら専門学校で必要な知識を得たとしても、その知識を生かすには少なくとも3~5年以上は厳しい修業期間に絶えねばならず、途中で挫折してしまう人も多いからです。

そのため知識だけでなく、パティシエとして独立したいという強い熱意が必要とも言えます。

 

またケーキ屋で働いて修行をするにしても、出来れば小規模な独立型パティシエ店で働いた方が良いでしょう。

大量生産型の生産工場等の場合、各部門が分担作業になっており一連の流れを把握する事が難しいものです。

小規模な洋菓子店であれば製造と販売の繋がりを体感する事でき、独立時の大きな糧にもなるかと思います。

またお店を選ぶ際には、自分の独立時に近いイメージの店舗を選ぶと良いでしょう。

 

またパティシエの修行と聞くと海外をイメージする人もいるかと思います。

実際にスイーツ店やケーキ屋の開業者の中には、フランス・ベルギー・アメリカ等海外へ渡航した修行経験があるという人も多いものです。

中には何のプランも立てず思い立つように渡航し、現地のお店で働きたい意向を伝えて修行をしてきたという人もいます。

 

海外のカフェやケーキ店で修行をするという事は味や技術を盗めるという事はもちろん、1人で渡航し本場で修行する事でパティシエとしても人間的に一回り大きく成長できる利点があります。

また海外修行に抵抗がある人であればパティシエのセミナープログラムに参加したり他店の商品構成を参考にしてみる・食品見本市に参加してアイデアを膨らませる等、自分なりに独立に向けて積極的に行動をしていく事が大切です。

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ケーキ屋の開業で失敗をしない為には

ケーキ屋の開業で失敗をしない為にはどうすれば良いでしょうか。

もちろん起業をするからには、どんなに経験豊富な人でも失敗する事はありますし、机上の計算通りにはいかない事も多々あります。

 

ですが開業前にしっかりと準備をしておく事で、想定される失敗をある程度防ぐことは可能です。

上記でも挙げたように、特にケーキ屋の開業というのは多額の資金がかかります。

1000~2000万円の資金が開業資金が必要なことから、それはほぼ一発勝負と考えても良いでしょう。

そのような大勝負で十分な下準備をせずに開業してしまうという事は、ほぼ博打のようなものです。

 

また開業をすると独立前には想定もしていなかった事が多々起こり得ます。

人が足りない・オペレーションがスムーズに行かない・集客ができない・思った以上にコストがかかる・調理技術はあるが経営の知識がなかった等、いざ足を踏み出してみないと分からない事がたくさん起こります。

特に開業後は多額の資金がかかっており後戻りする事が難しいため、開業前にできるだけ独立時に近いシュミレーションをしておく事が大切です。

もちろんシュミレーションである以上は店舗を構えることは難しいかもしれませんが、それ以外にもやれる事はある筈です。

例えば

  • 職場の先輩パティシエに試食してもらう
  • 知人・友人にケーキを試食してもらう
  • 自宅で開業してみる
  • ケーキ作り教室・パン教室等を開く
  • カフェ店等の空きスペース等を利用させてもらう
  • キッチンカー(移動販売)の検討
  • ネットや注文販売から始める
  • 開業前研修の利用
  • 知り合いのケーキ店に置かせてもらう
  • パティシエ人材派遣を利用する(色々な店舗を体験)
  • 短時間の副業販売から始める

 

上記はほんの一例ですが、出来るだけコストをかけずに準備練習をする方法は沢山あります。

ケーキを作る→実際に販売してみる、といった流れを踏むだけでも、商品管理から原価計算、集客方法や立地による特性など、様々な事を体感することができます。

いきなりヨーイドンで商売を始めるのと、何度もシュミレーションを重ねた上で開業するのとでは雲泥の差です。

大切に想う商売だからこそ、その下準備は大切です。

開業後に失敗をしない為にも、まずは今自分にできる範囲の事から始めてみてはいかがでしょうか。

 

ケーキの原価率は?

なぜパティシエの仕事が激務なのに低い給料でしかも潰れる店が多いのか、その理由のひとつにケーキの原価率の高さがあります。

一般的な飲食店の原価率は25~30%の原価が一般的。ですがケーキの場合にはそれ以上になる事も珍しくありません。

しかも今後は原材料やフルーツの価格が上がる可能性もあり、今後は原価が更に上がる可能性も考えられます。

 

例えばショートケーキ6号であれば原価が大体1500円前後かかります。

ケーキの原価率30~40%が一般的なので1500÷40%=3750円となり、やはり3500~4000円前後で販売しないと店は成り立ちません。

またケーキ屋の原価率の高さの理由の中には人件費や箱・紙袋・冷蔵庫やオーブン等の設備費、光熱費・土地代、蝋燭やプレートの料金も含まれています。

 

経営的にも原価率の高いケーキだけを提供していては経営を圧迫しますので、原価の低い焼き菓子の品目を多くしたり生地と具材のバランスを調整する等、品質を落とさずに原価を下げる工夫が必要になってきます。

特に経営者は原価をしっかりと把握していても、従業員は殆ど原価率を意識していないといったケースもありますので、材料費を始め一人一人に経営者意識を持たす事も大切です。

 

また例えば原価が40%~を超える商品があったとしても、それが必ずしも悪いとは言い切れません。

店舗によっては「売れ筋の商品」「利益を確保するための商品」「素材に拘りたい商品」「店主が個人的にお勧めしたい商品」など、その商品が配置されている意味合いが違うからです。

例えばその商品を食してもらう事で、結果的にそのお店のリピーターになってもらう事ができれば、多少原価が高くても十分にペイできます。

商品の原価率をしっかりと把握して適性な原価を見極め、自店の運営に役立たせていきましょう。

 

ケーキ屋では冷凍は使う?

ケーキ屋にとっては廃棄率も課題であり、売れ残りがあった場合には当日~翌日頃には廃棄となる店が多いかと思います。

とは言えショーケースにはケーキをある程度のボリューム数を揃えなければ集客にも影響が出てきますので、多少は廃棄覚悟でも店頭にケーキのバリュエーションを揃えておく必要があるとも言えます。

 

大手店など、クリスマス等の大きなイベント時には数日前からケーキを冷凍保存しているケースも多くあります。

また大手等の冷凍ケーキの場合、生クリームを使用する事も少なく主には冷凍解凍しやすいホイップクリーム等で代用し、イベント時などはその1~2か月前から冷凍しておき販売前に解凍してフルーツを乗せる作業に移る所もあります

 

個人店からしてみればイベント時などは前日から徹夜してもとても大手との生産量や販売数に勝てる筈もありません。

まして個人店では大手工場のように大量の冷凍ケーキを保管しておくスペース大型冷凍庫を確保する事も難しく、特にケーキ屋にとってクリスマスシーズンはビッグイベントでありその時期に生産数に限界があるという事は個人店にとっては大きな痛手です。

 

ただし最近では冷凍技術も発達しており、個人店でもショックフリーザー等を活用することで品質を保って長期間維持することができます。

ショックフリーザー高速で凍結することができる冷凍機。普通の方法でお菓子を冷凍すると、水分が抜け油脂が分離し食感や風味が落ちてしまいますが、急速冷凍すると素早く凍らせることでき、作り立ての品質を維持できます。

 

消費者にとっては出来たて手作りを食べたいと思うのは当然なのかもしれませんが、全ての商品をそうしてしまうと品数に制限が出来てしまったり作業に手間が多くなり、返って非効率になってしまう事も考えられます。

ケーキ屋の課題である廃棄率も、冷凍を使用する事である程度カバーできるでしょうし、作業効率も上がります。

また経営者であるからには調理だけでなく、新しいメニューの開発や店舗の今後の展開方法など、考える時間が必要です。

そのため消費者の期待やニーズを損なわない程度に冷凍の技術も取り入れ、バランスの良い運営を目指していくようにしたい所です。

 

ケーキ屋の集客方法は?

ケーキ屋さんの集客方法としてはどのような事が考えられるでしょうか。

ケーキ屋は客数を稼ぎやすい業態とは言えず、またシーズンによって売上変動が大きいため、普段から売上を底上げする集客方法を工夫する必要があります。

ここでは簡単な集客方法を幾つか挙げてみます。

 

ネット販売

今や洋菓子もネット販売は欠かせなくなってきています。

通販では生菓子は難しい場合もありますが、焼き菓子等であれば可能です。

ネット販売であれば集客範囲も広く、売上の底上げにもなります。

ですがHP製作に注力する事や、リスティング等の広告費のかけ方・ネット上のマーケティングにも配慮する必要があります。

 

ギフト

洋菓子はギフト商品としても喜ばれます。

ネット販売と同様に焼き菓子など、ある程度日持ちの良い商品が対象に考えられます。

インターネット上でもギフト対応可能な商品を増やす事で、売上増が見込める可能性があります。

 

ケーキ教室

店舗内や他スペースで定期的にケーキ教室を開くことも考えられます。

特に一般の方からすれば、プロのケーキ屋さんの調理方法は参考にしたい方も多い筈。

回数制や月謝制にする等、ある程度の売上も見込め、テナント賃料に補填する事もできます。

また地域住民とのふれあいにも繋がる事から、コミュニティスペースとしても有効です。

 

イートイン

店内にイートインスペースを設ける事で、カフェのようにくつろぎのスペースとして利用してもらう事もできます。

またケーキは他のお菓子類と比較すると高単価です。

そのため店内で試食を設けることによって、リピートに繋がる可能性があります。

今までのテイクアウトのみの形態を脱却し、利用客に楽しんでもらうスペースを提供していきます。

 

ラッピング

ケーキ屋さんで意外に気になるのがラッピング(包材)です。

人によってはラッピングに拘らないという人もいるかもしれませんが、特にギフト等においてはラッピングのセンスも大切。

包材に拘ることによって自店のイメージアップにも繋がり、利用客の増加が見込めます。

 

チラシ

チラシ集客はアナログと考える人もいるかもしれませんが、それだけケーキ屋さんの商圏は狭いもの。

例えば月によって近いイベント(クリスマス・バレンタイン等)のチラシを入れたり、キャンペーンチラシを同封してあげる事も大切です。

またイベント毎にそのケーキ屋で購入する事を習慣化してもらう事により、リピーター獲得にも繋がります。

 

SNS

ネット集客と同様に、現在ではSNSの集客も欠かせません。

例えばSNSによるクーポン配布やキャンペーンの告知・自店のブランディングなど、低コストで様々な目的に利用できます。

また若年層にリーチしやすいのもSNS集客の利点と言えるでしょう。

 

イベントの参加

地域のイベントに積極的に参加する事も間接的な集客になります。

「地元の行事とケーキ屋と何が関係あるの?」と考える方もいるかもしれませんが、ケーキ屋に来店する客層は近隣住民も多く、地元との接点を持つことでファミリー層にもPRできます。

また地元での口コミ波及も期待できる事から、時間の合間を見て地元のイベント等にも出来るだけ参加していきましょう。

 

ケーキ屋のコンセプト・差別化

スイーツ店やケーキ屋では差別化を重視する必要があります。

現在では洋菓子店を始め、デパ地下やコンビニ・スーパー・カフェ等、あらゆる店舗で美味しいケーキを食する事が出来ます。

中には大手の強みを生かし、材料一括購入で低価格で高品質なスイーツを提供している大型店舗もあります。

その専門店でしか食べられないスイーツを買いにくる顧客というのも多いので、当然に自店の強みや他店との差別化が必要になってきます。

 

またケーキ屋は特にコンセプトも大切です。

どのようなコンセプトを元に出店しているお店なのかを顧客に明確に伝える必要があります。

ケーキ屋さんに訪れるケースというのは普段利用以外にも、以下のように様々なシーンで利用する機会があります。

  • 誕生日
  • プレゼント
  • 贈答品
  • クリスマス
  • バレンタイン
  • 子供の日
  • ひな祭り
  • 父の日・母の日
  • パーティー時
  • カフェ来店時
  • 疲れた時に
  • 友人と会話を楽しむ時
  • 仕事の後 etc…

 

言ってみればケーキやスイーツは非日常食とも言えます。

それだけに特別感を感じさせる雰囲気作りや、顧客がワクワクするような仕掛け・感動してもらう為の店づくりが必要になってきます。

 

また利用客にも分かりやすいコンセプトを作る事は、後々のリピーターや固定客にも繋がります。

特にクリスマス等のイベント時に顧客をどれくらい獲得出来たかによって、次シーズンの新学期やバレンタイン・ホワイトデーの売上げも大幅に変わってきます。

「このケーキ屋に足を運ぶ事が毎回楽しみ」と感じてもらえるような店舗作りを心掛けたいものです。

 

最近のスイーツ店はデパ地下だけでなく、コンビニやファーストフード店も含まれます。

特にコンビニ等はスイーツ店に劣らないくらいのスイーツを低価格で提供してきています。

一方でコンビニスイーツ等はまだまだ専門店と比較すると味が劣る場合も多く、砂糖やクリームを多量に使用している商品も多い事から、専門店からすれば素材を中心に差をつける事もできます。

例えば国産食材に絞って材料を使用したり天然素材のみを使用する・有機栽培野菜を練り込んだスイーツ・手作りならではの凝ったトッピング・安心して沢山食べれる低カロリーなスイーツの提供等、様々な視点から自店のカラーを出していく事も可能です。

 

また販売方法から差別化を図っていく事も考えられます。

先ほども挙げたように、今ではネットを始めSNS等の利用によりクーポン券等の配布も簡単に出来ますし、スイーツ店の中にはネット専門で通販を中心に展開しているスイーツ店や宅配専門のスイーツ店・贈答用専売のスイーツ店等、それぞれの店で集客方法を凝らしています。

もしくは季節毎に旬の素材を取り入れたスイーツを提供するお店や、和菓子等も積極的に取り入れて併売している所もあります。

複合でカフェやパン屋等を併設して展開している洋菓子店もあるでしょう。

他店や大型店にない強みやコンセプトを打ち出していく事は特に個人のケーキ屋さんにとっても大切な事です。

 

パティシエは休息も仕事

パティシエというのは重労働です。

労働時間も長く体力仕事も多めであり、休日も少ない上にお店によっては福利厚生等がない所もあります。

増してケーキ屋を開業したばかりの経営者ともなれば、店の売上やオペレーション・従業員教育・食材管理等が気になって、ろくに休みも取れていない人も多いかもしれません。

 

ですがパティシエにとって、休息は大切です。

休息を取ることで肉体的疲労を回復するだけでなく、パティシエにとって大切な好奇心やアイデア力・想像力といった力を取り戻すことも出来ますし、今まで気付かなかった自店のウィークポイントに気付く事もあります。

もしくは経営者が休息を取ることによって、今まで休暇を取りずらかった従業員が交代制等で休みを取る事もできるでしょうし、リーダーが居ない事で従業員に責任感や連帯感が生まれる事もあります。

 

また休息を取るとは言っても2~3日の休息ではなく、出来れば定期的に1~2カ月の休暇を取ることが望ましいと思います。

例えば長期休暇を取って知らない地に旅行をするのも良いですし、他店のスイーツ店を食べ歩きしてみるのも良いでしょう。

もしくは他店とのコラボイベントを開催するのも良いですし、誰にも邪魔されず新メニューの開発にひたすら没頭する機会もあるかもしれません。

 

ゆっくりと休息を取ることで改めて自分の店を客観的に見ることが出来ますし、顧客に対してのおもてなしの心を取り戻すことも出来ます。

外に出なければ気付かない発見をもたらしてくれる休息は、オーナーパティシエにとっても大切な仕事の1つと言えるでしょう。

 

ケーキ屋の開業まとめ

ケーキ屋さんの開業・パティシエの独立について幾つか挙げてみました。

洋菓子店では多くのパティシエがおり、これから独立開業を検討している方もいるかと思います。

従業員として働くことももちろんやりがいはありますが、やはりオーナーとしてお店を開業し、自分のオリジナルスイーツをたくさんの人に喜んでもらいたいという方もいる筈です。

パティシエに必要なのは美的センスや味覚の他に、何よりもケーキやスイーツが好きという気持ちも大切です。

スイーツ作りが好きという気持ちさえあれば、長時間の労働も日々のアイデア作りも苦にならないもの。

今後も個性的なスイーツ店の開業に期待したいですね。

それでは今日はこの辺で。

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