託児所を開業・経営するには?資金や売上・失敗理由など徹底解説

今回は託児所の開業・経営について挙げてみたいと思います。

現在でも保育園・保育所の数は足りていないと言われており、またバブル期以降は親の共働き環境や女性の社会進出が増加したため、待機児童数が増えたという声も聞かれます。

現在待機児童としては全国で2万人を超えており、特に都市部ではその風潮が顕著にみられます。

また保育所等に入れたとしても、その施設の質の問題やトラブルなどもメディアで報道されており、今後託児所の存在というのは増々重要になってくる事は間違いないでしょう。

託児所を初めとする保育支援関連のビジネスは今後も需要が続く事になるかと思います。

今回はそんな託児所の開業について触れてみます。

スポンサーリンク

託児所とは

託児所はご存知のとおり乳幼児を預かる施設のことです。

託児所の開業について触れる前に、まずはその大枠について簡単に触れておきたいと思います。

まず保育園には主に「認可保育園」「無認可保育園」があり、それぞれに特色があります。

以下にその違いを挙げてみます。

 

認可保育園

認可保育園とは、国や自治体による「認可」を受けた保育施設のことです。

例えば「認可保育園」「幼稚園」などがこれに当たります。

許可保育園には厳しい審査基準が設けられていてそれをクリアした施設であり、保護者の仕事や家庭の事情により保育が難しい場合に入園が認められます。

公営であるため認可外保育園と比較すると入園の料金が安めです。

ですが認可保育園に入園するには、申し込みが抽選であったり預ける時間などにハードルがあったりもします。

 

認可外保育園

認可外保育園は、逆に国や自治体による「認可」を受けていない保育施設のことです。

今回のテーマでもある「託児所」「ベビーホテル」、または少人数で運営している保育園なども認可外保育園に当たります。

認可外保育園では料金は高めですが、特別な入園の基準もなくすぐに入園しやすいのが特徴的です。

つまりどのような家庭の方でも利用しやすく、様々な状況の子供が入園しています。

24時間預かってくれるような託児所も多いですが、家庭によって短時間の利用などもニーズがあります。

認可外保育園は「届出」をする事で開業が可能とされています。

 

つまり簡単に言えば、認可保育園は国からの補助がありますが条件が厳しい反面、無認可保育園は国からの補助は少ないですがオーナーの経営方針がある程度反映されやすい環境という事は言えるでしょう。

育児保育に関して独自の経営方針やカラーを打ち出したいと考えている人であれば、無認可保育園が適しているケースも多くあります。

 

託児所を開業・経営するには

託児所を開業・経営するにはどのような手続きが必要なのでしょうか。

 

まず先ほども少し触れたように、託児所を開業するには「届出」をする必要があります。

具体的には「認可外保育施設設置届出書」を市町村の保育担当課に提出する事になります。

以前は乳幼児の数が6人以上の場合のみ届出が必要だったのですが、現在では1人以上の場合でも届出が必要となっています。

 

もし届出をしなかった場合には、児童福祉法第62条の4により罰則を受ける可能性があります。

児童福祉法第62条の4

(前略)届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、50万円以下の過料に処する。

 

そして無事に届出が完了すると役所の職員が託児所を訪れ、立入調査を実施することになります。

この立入調査は「認可外保育施設指導監督基準」に基づいて行われる事とされており、例えば「児童1人当たりの面積」や「有資格者の数」などの調査をされます。

調査の結果次第では、改善指導や事業停止命令等の措置がなされる可能性もあります。

 

そしてもし無事に調査をパスすれば、認可外保育施設指導監督基準を満たす「証明書」が交付される事になります。

託児所開業においては役所や担当者によって多少の考え方の違い等が見られるケースもありますが、じっくりと相談をしながら届出手続きを進めていきましょう。

 

託児所の開業に資格は必要?

託児所を開業したり勤務するのに資格は必要なのでしょうか。

結論から言えば、資格は必須ではありません。

資格がなくても託児所で働くことは出来ます。

託児所は教育施設ではなく子どもを預かってもらうための施設であるため、保育士などの資格所持者でなくとも働くことが出来ます。

また経営者だからと言って必ずしも資格を持っていなくてはならないという事もありません。

 

ただし託児所のような認可外保育園であっても指導監督基準は守る必要があり、保育に従事する者の数や資格が定められています。

そして保育に従事する者の概ね3分の1以上「保育士又は看護師の資格を有する者」を配置する必要があります。

そのため資格を持っていなくても開業自体は可能ですがその場合には保育士等を雇用する必要があり、急な欠員や退職などを考慮すると、経営者自身が資格を持っていることが望ましいと言えるでしょう。

例えば経営者(資格所持者)+保育士1名など、預かり人数や他スタッフのシフトに応じて検討するようにしたい所です。

POINT資格がなくても開業や勤務は可能ですが、必要保育士の数など監督基準を満たして運営をする必要があります。

スポンサーリンク

託児所の開業資金は?

託児所の開業資金はどれくらいかかるのでしょうか。

ここではシュミレーションとして託児所の開業資金を考えてみたいと思います。

 

 開業資金条件

  • 物件取得費:180万円(賃料18万円×10カ月)
  • ※テナント面積:約18坪(30名程度まで想定。園児1人あたり1.65㎡×30名=49.5㎡。各スペース+10.5㎡=約60㎡で仮定。)
  • 内装工事費:180万円(坪10万。DIY内装含む)
  • 宣伝広告費:40万円(チラシ・WEB広告。園児・従業員募集広告)
  • 開業前人件費:30万円(日給1万円×計4名×1週間程度)
  • 家具・家電:50万円(中古含む。机・椅子・PC・キャビネット・FAX・ベビーフェンスなど)
  • 食器・玩具・文具など:20万円(おもちゃ・絵本・文房具・教材・おもちゃ箱など)
  • 医薬品:3万円(絆創膏・爪切り・おむつ・体温計・包帯・おむつ入れ・哺乳瓶など)
  • 通信費:10万円(HP製作費など)
  • 雑費・消耗品:5万円

 

開業資金項目 金額
物件取得費 1800000円
内装工事費 1800000円
宣伝広告費 400000円
開業前人件費 300000円
家具・家電 500000円
食器・玩具・文具等 200000円
医薬品 30000円
通信費 100000円
雑費・消耗品 50000円
合計 5180000円

 

シュミレーション上では518万円の開業資金が必要となります(シュミレーションであり実際の開業資金とは異なります)

 

開業時には保育コンサル等を利用する方もいるかもしれませんが、その場合には700万円~の開業資金が必要となる場合もあります。

託児所の開業資金で多く占めるのは物件取得費と内装費になりますが、ベビーシッター等と異なり託児所は立地によって大きく集客力が変わってくるため、物件選びは慎重にする必要があります。

 

またテナントにおいては乳幼児1人あたりの必要面積も定まっていますし、園児の預け入れ人数は保育スタッフ数にも影響する事から慎重な判断が必要です。

特に託児所に子供を預ける保護者の不満の中には、「託児所のスペースが狭い」という声が多く挙がりやすいですし、開業後に簡単にテナントを変更することは出来ません。

テナント選びを始め、開業資金を有効に使ってスムーズにスタートを切れるようにしたい所です。

 

託児所の売上・利益は?

託児所の売上や利益はどのくらいを見込めるのでしょうか。

ここでもシュミレーションとして託児所の売上を考えてみたいと思います。

 

 売上条件

  • ※開業後3年目~を想定
  • 預かり人数:30名
  • 保育料:1350000円(45000円×30名)
  • 入園料:60000円(入園料30000円×月2名の入園と仮定)
  • 一時保育料:30000円(1時間/1000円)
  • 売上:1440000円(1350000+60000+30000=1440000)

 

 経費条件

  • テナント賃料:250000円
  • 人件費:550000円(園長(自分)他/ 保育士1名+他スタッフ2名)
  • 給食費:110000円
  • 保育用品・おやつ等:40000円
  • 水道光熱費:30000円
  • 損害保険料:15000円
  • 交通費:12000円
  • 通信費:10000円
  • 雑費・消耗品:20000円

 

売上項目 金額
保育料 1350000円
入園料 60000円
一時保育 30000円
合計 1440000円

 

経費項目 金額
テナント賃料 250000円
人件費 550000円
給食費 110000円
保育用品・おやつ等 40000円
水道光熱費 30000円
損害保険料 15000円
交通費 12000円
通信費 10000円
雑費・消耗品 20000円
合計 1037000円

 

[売上合計] 1440000円ー[経費合計] 1037000円=403000円

シュミレーション上では403000円の営業利益が見込める可能性があります(シュミレーションであり実際の収支とは異なります)

 

上記では開園後3年目以降を想定して考えてみましたが、実際に園児の確保が難しい開業当初は赤字が続くことも予想されます。

託児所のコストで高く付くのが人件費・テナント賃料です。

特に24時間保育などの託児所であれば人件費はかかりやすくなるでしょうし、開業当初に乳児や1~2歳児の入園が多くなるとすると、0歳児は3人に1人、1,2歳児でも6人に1人の保育スタッフが必要となりますので人件費から事業効率も考えなくてはなりません。

 

また集客力も考えると立地もある程度は競争力のある物件を選択する必要がありますし、託児所の預かり人数を30名として余裕スペースを含め1人あたり約2㎡必要としても計60㎡ほどのテナントが必要となり、それなりの広さが必要となるため賃料も高くなります。

多くの補助金が出る認可保育園と比較すると、託児所ではよりシビアな事業計画が必要と言えるでしょう。

 

託児所のスタッフは何人必要?

託児所の保育スタッフは何人必要になるのでしょうか。

保育をする以上は配置基準で定められた人数を確保する必要がありますし、あまりにもスタッフが多すぎると人件費にも影響します。

保育に従事する者の数については、以下のように定められています。

  • 乳児:おおむね3人につき1人以上
  • 満1歳以上満3歳に満たない幼児:おおむね6人につき1人以上
  • 満3歳以上満4歳に満たない幼児:おおむね20人につき1人以上
  • 満4歳以上の幼児:おおむね30人につき1人以上
  • ※ただし、1つの施設につき最低2人以上であること。

 

上記を見ても分かるように、低年齢ほど保育士の数が必要になります。

特に乳児や1~2歳児など、少し目を離した時に怪我やトラブルを起こしてしまう可能性もあります。

スタッフ全員が保育士であればそれが理想的なのかもしれませんが、実際にはそうもいかないケースが多いでしょう。

また必要条件を満たすために、スタッフの労働時間をフルタイムにするか・パートタイムにするかという問題もあります。

 

ただし上記はあくまで最低人数であり、託児所を適切に運営するための適性人数を把握しておく必要があります。

また先ほども挙げたように、保育スタッフの概ね1/3以上は保育士や看護師資格を持ったスタッフの配置が必要となります。

スポンサーリンク

自宅で託児所を開業するには

自宅での保育を希望する方もいるかと思います。

託児所のような認可外保育もありますが、自宅で始めるのであれば選択肢の1つとして「家庭的保育事業」も検討できるかと思います。

これは主に待機児童の解消を目的とした制度として誕生しました。

家庭的保育は国の認可事業と認められており、補助金が受け取れるようになっているのが特徴的です。

そのため保育ママの収入は保育料と区からの補助金が主になります。

 

保育者の自宅などで子どもを預かることができ、人数としても原則として0~2歳児を1~3人、補助者を置く場合には0~2歳児を5人まで預かる事ができるとされています。

保育ママとして自宅で1人で運営をしている人もいますが、2~3人で運営をする人たちもいます。

必ずしも資格が必要な訳ではありませんが、実際には保育士や幼稚園教諭・看護師資格などを持った人が保育ママとして運営をしている事が多いように思います。(国が認可をしている「家庭的保育事業」と、自治体が運営する「家庭福祉員制度」で多少異なり、特に自治体によっては保育士資格が必須となる所もあります)

 

また認可事業であるため、家庭的保育者や実施場所等の要件を満たす必要があります。

例えば保育ママになるための条件の一例として、以下のような点があります。

  • 子育てに熱意と愛情を持っていること
  • 区内に居住する心身健全な25歳~60歳くらいまでの方
  • 子どもを育てた経験がある、または保育士・看護師資格、幼稚園教諭免許があるか、保育所等の施設で3年以上働いた経験のある方
  • 同居親族に就学前の児童がいないこと、かつ看護・介護の必要な方がいないこと。
  • 他に職業を持たず保育に専念できること
  • 保育室として使用できる9.9平方メートル(6畳)以上の部屋があること。
  • ペットを飼っていないこと etc…

 

また自宅のような在宅保育と言うと、ベビーシッターチャイルドマインダーをイメージする方もいるかと思います。

保育ママとベビーシッターの違いが分からない方もいるかと思いますが、ベビーシッターの場合には利用者の自宅に訪問して保育を行う点や、0歳~12歳の子ども対象といった年齢も異なります。

また保育ママの場合には認可事業となるため、行政等での手続きが複雑になる点もベビーシッターとの違いと言えるでしょう。

保育ママやベビーシッターなど在宅保育は様々ですが、自分が提供したいと思う保育サービスの最適な開業方法を見つけることが大切です。

 

保育園の開業に適した物件とは

託児所のように、認可外保育園に適した物件にはどのようなものがあるでしょうか。

まず保育園のテナントを考える上では、その安全性や危険性を考慮する必要があります。

保護者の事を考えると、車の送迎がしやすかったり駅近物件など利便性の良い場所も候補に挙がるでしょう。

 

また当然のことながら、テナントを選ぶ際には行政の指導監督基準に沿った物件を選ぶ必要があります。

例えば園児定員に対する面積・採光や換気が確保されている事・一階物件か空中か(避難経路の問題)・建築基準法・消防法上の基準・乳児と幼児の部屋を分けるかなど、保育園開業時に考えることは多数あります。

 

また保育園の開業とは言え、それはビジネスでもあり競合他社を意識して物件選びをしなければなりません。

周囲に保育園・託児所があるか・人口数や世帯統計はどうか・曜日ごとの交通量調査など、綿密な立地調査が必要です。

特に保育園開業に適した物件選びは難しいとも言われ、間違えると物件契約後に開園できないという最悪の事態さえも考えられます。

できれば保育園開業経験のある業者などに力を借り、慎重に手続きを進めていきたい所です。

POINT物件を後から変更する事は困難です。
監督基準と照らし合わせながら立地調査をじっくりと行い、希望に合ったテナントを根気強く探すようにしましょう。

 

保育園の開業で失敗するケースとは

保育園を開業しても、残念ながら失敗をして廃業をしてしまう託児所も少なくありません。

それでは保育園開業で失敗をしてしまうケースにはどのような点が考えられるでしょうか。

 

時間

保育事業では、園児が集まるまでに時間がかかります。

それこそ半年~一年かけて徐々に園児を集められるといった所でしょう。

特に新規の託児所ともなると、保護者の不安等から余計に集まりにくいと思われます。

軌道に乗るまで時間がかかり、そのまま資金が途絶えてしまう可能性も考えられます。

 

事故

託児所を開業しても、もし施設内で事故が起きたり感染症が起きたりといった問題が起こると、経営者としては管理上の責任を問われる可能性があります。

中にはベテラン保育士を配置しておいても、小さな子どものため予期しないトラブルが起こることはあります。

もし大きな事件が起こると、その後の評判が悪くなり、集客にも影響する可能性があります。

 

保育士不足

大手保育園であっても、長時間労働の施設や年収ベースで200万円台といった所も少なくありません。

また労働時間内だけでなく、家に持ち帰りで雑務をこなしている保育士もいます。

託児所においても概ね1/3以上は保育士を配置することが求められており、今後の人材難が経営に支障をきたす可能性もあります。

 

季節変動

託児所の開業後は、園児の増減にも柔軟に対応していかなければなりません。

例えば4月においては託児所の園児はぐっと減ります。

新年度は認可保育園に転入する人が多いからです。

その後は秋口に向けて徐々に園児が増え始めますが、逆に3月までにある程度の園児が確保できていないと経営が厳しくなる事も予想されます。

 

保育=ボランティア

保育と言うとどうしても慈善事業のようなイメージを持ったり、利益を出すことに対してネガティブな印象を持つ方もいるようです。

もちろん保育をする上では安全性や体調を考慮しながら、子供たちの気持ちを第一に考えて一生懸命に接していく事が大切です。

また子供の発達や成長を考える保護者の心情を察し、保育士としては子供や親と密にコミュニケーションを取り十分に連携を取ることも必要かと思います。

 

ですがある程度の利益を出さなければ、保育園として質の良いサービスを子供たちに提供することは出来ません。

もちろん金儲け主義の保育園は論外ですが、利用者の満足のいくサービスを提供して適正料金を頂かなければ運営は成り立たないでしょう。

託児所を開業する上では事業者・保育者としての両面で運営を考えていく必要があるように思います。

 

託児所のコンセプト

現在では多くの託児所があります。

今後託児所を開設するにあたっては、ある程度のコンセプトや差別化を打ち出すことは必要になってくるようにも思います。

例えば託児所のちょっとしたコンセプトとして以下のような事も考えられます。

  • 24時間託児所
  • 教育・学問に力を入れている
  • 英語学習ができる託児所
  • 深夜預かりが可能
  • ベビーシッターサービスがある託児所
  • 送り迎えのある託児所
  • アトピーやアレルギーの子供に対応している
  • 栄養士やピアノ講師がいる

 

他の幼稚園や保育所で扱わないサービスを前面に押し出すなど、それぞれのコンセプトを考慮する事も大切でしょう。

また託児所の商圏は狭いので、周囲の世帯がどの時間帯に保育を必要としているのか料金・時間帯ニーズを把握し、それに合わせたプランを提供する事も大切です。

 

託児所の開業・経営まとめ

託児所の開業・経営について幾つか挙げてみました。

確かに保育所や託児所開設に伴う法規制は厳しいものがあり、運営をしていく事が簡単ではありません。

ですがそれ以上に大切な子供を預かってお世話をするという、大きなやりがいを感じられるお仕事かと思います。

また公的な保育サービスではカバーできない部分もあり、託児所のような民間施設が役に立てる事も多くあります。

待機児童問題が話題に上がる中、安心して子供を預けられる新しい保育施設・託児所の開業に期待したいですね。

それでは今日はこの辺で。

スポンサーリンク