独立・開業時の物件・立地の選び方は?

独立・開業時の物件・立地の選び方は?

 

今回は独立開業時の立地や物件選びについて挙げてみたいと思います。

いざ店舗のイメージやコンセプトが決まり独立の資金目途が立ったとしても、店舗を開業する

立地が決まらなければ商売は始められません。

もちろん自宅開業やネット販売・移動車販売などの手段もありますが、そのエリアで腰を据えて

じっくり商売をしていきたいという場合には店舗を検討したい所。

そうは言っても開業場所はどのような場所でも良いという訳ではなく、その業種・職種によって

適正エリアや場所も様々。今回はそんな開業時の立地・物件について触れてみます。

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立地特性を知る

それぞれの立地特性を大まかにでも知る事によって自分が出店する店舗がどのようなエリアと

マッチングしているか予測を立てる事が出来ます。

①商店街の立地特性

商店街には古くから親しまれているお店も多く特に小さな個人店が多い印象を持たれる事も

多いかと思います。 最近では出店テナントの供給不足により大手やチェーン店も商店街に出店

するケースもありますが、いずれにしても利用客は地域住民やその近隣施設の顧客がメインとなって

きます。

商店街は人通りの多さだけを見れば繁華街と客層が同じようにも見えますが、商店街の通行人には

その土地に対して土地勘があるという点が異なります。地域密着でまた客層が若年層から高齢者

まで幅広く、小さな個店を開業しても受け入れられやすいという利点もあります。

そのため商店街ではどれだけ地元客を取り込んでいけるかが成功の要素になります。 また商店街は

繁華街などと違いその住民たちの生活の延長線上にある立地の為、買い物に関しても繁華街と比較

すると購入単価が低くなるという傾向があります。

そのため商店街に高級志向の個店を開業するというのは法則から言えば逆効果で、価格設定も平均

~低めの設定にするのが通常です。また土地勘の強い地元客がターゲットとなる事から開業立地も

駅前などの一等立地にこだわる必要はなく、クチコミによる波及効果も期待大である事から

空中店舗や二等立地でも十分検討できます。

また商店街での開業をする際には周辺店舗との協力関係も欠かせません。商店街の各店舗は小さな

面積で営む店舗も多く、1個体だけでは集客力が低い傾向もあります。その為他店舗とタッグを組み

集客に臨む姿勢も大切です。

例えば近隣店舗同士で広告やクーポン券を置かしてもらうとか近隣店舗からの紹介はリベート制に

する等、商店街中の店舗同士で団結する事で大きな集客力を生む事が出来ます。個店でのカラーを

出しつつも近隣店舗との協力で集客力を高める事が出来る点も商店街の立地特性と言えるでしょう。

②繁華街の立地特性

いつも賑やかな繁華街。特に土日ともなれば買い物客や家族・カップル等でたくさんの人が

集まり易い立地です。

また繁華街は飲食にしてもショッピングにしても目当ての食べ物や目当ての商品を探すのに苦労

しない立地です。

また繁華街に来ている客層に共通して言える事は「わざわざ出かけてきた」という事です。

言い換えれば非日常の立地と言え、必ずと言っていいほど繁華街に来た人たちは昼食にしろ夕食

にしろどこかで食事をします。その為繁華街は特に飲食店に適した立地でもあります。

また通常の立地と比較するとやはり高い売上げを見込みやすく、客単価も高めな傾向があります。

それだけに他エリアと比較するとテナント賃料も高くなりがちです。

また顧客は自分の土地を離れわざわざ繁華街まで来た訳ですから、その繁華街に対して土地勘がない

人が多くいるという事は言えます。そのため飲食にしろ物販にしろ無名の店舗よりは普段から慣れ

親しんだフランチャイズ店・大手有名店のほうが経営を有利に運びます。 また群集心理の1つの

ようなもので、繁華街に来ている客は周辺店舗の味や評判を知らない人々も多い為、路地裏よりも

大通り・メインストリートでメニュー等が外に置いてあり、店の中の様子が良く見えて、店内に

客が多い店舗を選択する傾向があります。これも土地勘のない土地だからこそ安心感を求めている

客の気持ちの現れです。また商店街と同じく近隣店舗との協力関係が自店の集客力を高める助け

になる事も繁華街の特性の1つになります。

③オフィス街の立地特性

オフィス街の立地は普段サラリーマンやOLなどその周辺に勤める人たちが多く通る立地になります。

そのため繁華街等と比較すると当たり前のように毎日その土地を通行している人たちであり、

土地勘も十分にあるはずです。

そのため固定客が付きやすくリピーターも確保しやすい立地と言えます。

また来店時間帯も朝から夕方18時頃までの来店が多く、繁忙時間帯に合わせて調理や在庫調整・

アルバイト等の人員調整もし易い立地と言えるでしょう。

しかし逆に言えば昼食時間帯や夕方以外の時間は集客が減少する傾向があり、時間帯によって

売り上げにバラつきが生じやすくなります。また土日祝は極端に売り上げが下がる事も多く、

平日にどれくらい売り上げを伸ばせるかで平均売上も大幅に上下します。

そのため複数店舗を構えるのであれば業種によっては1店舗はオフィス街・2店舗目は繁華街

など、エリアによる立地分散をしていく工夫の1つと言えます。また昼間はランチメニューを

提供し、夜はアルコールを中心に提供する等、時間帯によって提供品目を変えていくのも

このエリアではリスク回避になります。

またシーズンによっては宴会や忘年会など定期的な需要を掘り起こす事も検討する必要が

あります。固定客が付きやすいのはオフィス街ならではですが、逆を言えば店の味や商品品質で

一度評判が落ちると、巻き返すのが難しい立地とも言えるでしょう。

 

またオフィス街の飲食店は特に品目をバラエティ豊富に用意しておく必要があります。

来店するのは幾つかのオフィス近隣の飲食店の中から週1~週3位の頻度で頻繁に来店している

固定客・準固定客です。メニュー数が少ない店舗や味が単一的な店舗は飽きられやすい傾向があり、

店舗側としてはいかに顧客を飽きさせないかの工夫が必要です。例えば日替わりメニューや季節

限定メニューを含める等、常に新鮮なイメージを店舗に取り入れていく必要があるでしょう。

④住宅街の立地特性

住宅街というと居住用地というイメージもありますが、意外に住宅街の開業店舗が成功している

事例が増えています。その理由の1つとしてやはり賃料の低さが挙げられます。

テナント賃料は固定費であり利益を左右する重要なコストで、業種によっては住宅街も十分に

開業立地の候補に入れる事ができます。

また競合店舗の少なさも住宅街ならではの利点で、繁華街や商店街と比較すればその競合店の

少なさはかなりの優位性があると言えます。

また当然ながら繁華街等と比較しても店舗までの距離が近く、手軽に利用できる立地のため、

日常的な商品や飲食店のほうが受け入れられやすい立地という事は言えるのかもしれません。

 

また住宅地と一言に言っても土地柄によって様々で、例えば古くから高齢者層が多く住む土地も

あれば、高層マンション・新設アパート等が立ち並ぶ新興住宅地もあります。

この2つであればどちらかと言えば新興住宅地の方が開業には適しています。高齢者は新規店舗に

馴染むにも時間がかかりまた外出頻度も少なめです。一方で新興住宅地に住む中年・若者は買い物

や外食頻度も多くまた新しい店舗にもすぐ注目します。

住宅街立地は駅前立地や一等地と比較すれば競合も少なく集客は比較的容易な可能性も高く

なりますが、元々居住用の地域である為、用途地域制限やテナント側の意向と自分の希望業種が

かみ合わない等の弊害が存在するケースも多々あります。

また住宅街での開業で一番注視したいのが女性客の取り込みで、主婦などの女性客は特有で

お気に入りの店舗を見つけたら少々距離がある店舗でも足繁く通ってくれます。

また口コミによる波及効果も期待しやすく、周囲に好評判が広がり安い一面もあります。

 

しかし逆に一度避けられるとそこから挽回する事が困難になるケースもあります。

開業種にもよりますが女性顧客をターゲットにしていく場合には店舗内の清潔感はもとより

女性を意識したお得感のあるサービスヘルシーな調理美容に良い食材・お洒落な内装など

女性心を配慮した店舗作りが求められます。

また住宅街の場合にはその商圏に住む住人の特性を見極める眼が必要になります。

住宅街は他エリアと比較しても個人店にとってはチャンスの多いエリアであると同時に、

当然にどの住宅街でも同じような住人かと言えばもちろんそのような事はなく、自分の店舗の

カラーがそのエリアの住人とマッチしているかどうかの慎重な見極めが求められます。

⑤ロードサイドの立地特性

ロードサイドの立地特性としては車客がメインになってきます。

そのためまずそれに応じた規模スペースの駐車場を確保できるかどうかが大事になってきます。

また駐車場に入るにもスムーズに入れる導線が確保されているかどうかも大切でしょう。

またドライブスルーでテイクアウトできる食材かどうか等も検討しておく必要があります。

近隣に住宅地があってもやはりメインは車客です。

そのため曜日それぞれの交通量調査は欠かせませんし当然交通量が多いに越した事は

ありません。例えば大型商業施設近隣のロードサイド店舗では土日祝日はもちろん夏休みや

春休みに客が集中するエリアもありますし、食材や商材によってはお盆や年末年始にも積極的に

営業をする事も考えられます。

またどのような業種の車が多い通りなのかも確認が必要です。例えば工業車が多く通る

ロードサイドにイタリアン店を開業しても集客は見込みづらいでしょうし、分離帯など

反対車線の車は自店のお客さんにならないので対象道路の交通量を調査します。

併せて近くの交差点の有無も確認しておきたい所です。交差点付近であれば店舗にある程度の

視認性があれば車が停止している時に顧客は入店してこれますが、交差点の無い立地では

よほど目立つ建物でないと店舗が視認される事なく素通りされるからです。

そのためファミレスを始めロードサイド店舗はこれでもかというくらい大きな看板を掲げて商売を

しています。ロードサイド店舗としては数十メートル前からでも確認できる位の目立つ店舗や

看板作りが可能な事やそれが出来る豊富な資金力が必要になってきます。

またドライバーがメインターゲットと考えると運転中の心理を理解してあげる事も必要です。

長距離のドライバーであれば来店して少し落ち着き一服したいと考える人も多いでしょうし

家族連れであれば小さな子供を含め家族全員で楽しくくつろげる空間が欲しいというケースも

あります。

取り扱う商品にしても近所の小売店で販売している手で持ち帰り可能な商品をわざわざ車で

来てロードサイド店で購入する利点はあまりありません。徒歩では持ち帰りが難しい商品など

その立地でしか販売が難しい特性の商品等を扱っていく事なども検討する必要があるでしょう。

ロードサイドではインパクトの強さだけではなくドライバー心理を考慮した店舗作りが必須です。

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物件選びはどこをチェックする?

大まかにでも出店エリアが決まったとして、肝心の物件選びはどのような事に注意して

選べば良いでしょうか。主だった所を挙げてみます。

商圏・エリアの人口・世帯数を把握する

基本的に自分が開業する店舗の需要がその周囲エリアにあるかどうかが重要ですが、それでも

ざっくりとでもその地域の人口流入や世帯数を把握しておく事は大事です。今は人口が多いように見えても

毎年のようにそのエリアから人が離れていっている地域では少し心配です。

総務省統計データ等で世帯数や世帯人数・年齢別人口・人口の増減などを調べる事は出来ますし、

ターミナル駅では乗降客数を確認する事ができます。また幹線道路沿いでは国交省のサイトで

交通量の確認も出来ますので立地に合わせて調査内容を絞ります。

開業する店舗の種類によっても商圏距離は異なりますし必要人口数も異なります。また商圏や周囲の

人口を調査する事によって自分がターゲットとする顧客像とのズレが生じていないか再確認する

事が出来ます。FC店などは特にこの商圏調査を徹底的に行っている所が多く、個人の店舗では

そこまで詳細な調査が難しい場合もありますが、イメージや勘だけでなく数字で裏付けを取る事も

自信に繋がります。

周囲に競合店はどれくらいあるか

自分の業態が決まっている場合、開業予定の周囲にどれくらい同じ業種の店舗があるか確認する事は

大切です。一般的に言えばやはり周囲の競合店が少ない方が商売がしやすく売上げが見込みやすい

ですし、逆に競合店が多ければ売上げは見込みにくくなります。

例えば街中でよく見かけるコンビニで言えば周囲に競合店が出来ると5万~10万くらいは

売上げに影響が出ます。またその店の商品構成(メニュー)・商品の価格帯・1日客数・時間帯

によってどれくらい集客にバラつきがあるか・自店からの距離・客単価・その店の強み・自店と

ターゲットが被る点など、近隣で繁盛している店があれば、そこには自分が開業する際のヒントが

幾つか詰まっているはずです。逆に言えば競合店にはない特色を自店で打ち出していく方法も

1つでしょう。

顧客の属性を理解する

開業予定立地の周囲を実際に歩けば平日や週末にどれくらいの人口が歩いていて年齢層が

どれくらいの人が多いのか大抵は雰囲気が掴めるはずです。自分がその立地に開業した場合

お客さんが来てくれそうかどうか実際にイメージしてみる事も大事です。

特に最近では大手店が商品を低価格にて提供する機会が多く、軒並み小規模な商店や個人店舗

は廃業に追い込まれている事があります。そのため今まで以上に顧客属性や来店動機の絞り込み

を強化し、個人店ならではの強みを打ち出していく必要があります。ターゲットを絞り込む事で

自店の特色が明確になり他店との差別化やPRにも繋がり、引いてはリピート客の増加や収益向上

に繋がります。顧客属性とは年齢や性別だけでなく家族構成や地域・所得・来店動機など、顧客に

関係する要素が含まれます。

その地域の特徴を理解する

エリアによってその地域の特性というものがあります。

上記で挙げたように繁華街・オフィス街・住宅街・商業施設・商店街近辺・学生街など

その地域によって特色がまったく違います。

また自分の開業業態がそのエリアにマッチするかどうかも重要です。

例えばクレープ屋を開業する人がいたらこの中ではオフィス街の開業はミスマッチに

なる可能性が高いでしょう。どちらかと言えば学生街や繁華街というイメージが適切かと思います。

ただ学生街でも土日はオフィス街と同じく人通りが少なくなりますし、夏休みなどは集客が難しく

なります。繁華街は逆に土日の集客は見込めますが平日は土日ほど見込めない事が多いでしょう。

住宅街でも年齢層が高めのエリアではクレープは受け入れられにくいかもしれません。

エリアによって商品の特性等を当てはめて開業場所として適切かどうかイメージしてみる事も大切です。

開業店舗が街と調和するかどうか

例えば街をふと歩いていると、なぜこの立地にこのお店?という感じのお店を見た事がある人も多いかと

思います。一概には言えませんがやはり街の風景にミスマッチなお店は集客が難しいように思います。

街の雰囲気やコンセプトを理解し、その中で上手く溶け込めるかどうかという点は商売の視点でも

大切になってきます。

例えば商店街に開業をする場合、そこで求められる店舗は格式高い外観や建物ではなく、

むしろ馴染みやすさや暖かさ・安心感を抱かせる店舗でしょう。自分が求めるイメージ通りの

店舗を造る事も大切ですが、それ以上にその環境にさりげなく調和している店舗装いが必要

なのかもしれません。

利用客の所得層を把握する

自店がターゲットとする顧客の所得層を明確にしておく必要があります。

ターゲット層が一般層なのか、富裕層向けなのか等によっても取り扱う商品や販促方法・出店エリア・

店舗内装など様々な部分が変わってきます。

例えば極端な話さびれた地方エリアに高給サロンを開業してもヒットする可能性は低いと思いますし、

富裕層向けの商品であれば資産になる物・健康関連・ブランド物など一般層とは少し商品構成も

変わってきます。自分が提供する商品の価格帯とターゲットとする顧客のニーズがマッチしているか

どうかも重要になります。

動線を把握する

動線を把握することも大事です。例えば駅から降りてきた人たちがどのように流れていくのか

人の流れを把握してみる事も動線の確認です。駅前だからといって好立地という事はありません。

また例えば駅から離れている立地でも、近隣に大型商業施設がありその商業施設までの道のりで

人通りが多ければその中間地点も開業場所として検討できますし、あるいは途中に交差点があって

人が定期的に多く立ち止まる場所であれば多少視認性の悪い路地裏でも検討候補に入る事も

あるでしょう。

また誘導看板を置く事で開業店舗への導線を確保できるのであればそれも候補に上がります。

人の流れをどのように捉えるかという動線の把握も大切になってきます。

道路の広さ・駅からの最短距離・店舗間口はどうか

開業場所の道路の広さや間口の広さも重要です。一般的に人間は狭い道よりは広い道や歩道がある

道を選んで歩き、より安全性を確認しながら歩行します。立地により様々ですが狭い道よりは

大通り沿いの店舗のほうが良いですし駅からの道のりも一番最短距離で店舗へたどり着ける道を

選ぶ傾向があります。また店舗の間口もやはり狭いよりは広いほうが店舗の中も見えやすく

なりますし、安心感に繋がるため、間口は広いほうが良いとされています。

前テナントはどのような業種でなぜ廃業したか

前のテナントがどのようなお店をやっていてどのような理由で撤退したのか確認しておく事も必要です。

本当はその店に撤退理由を聞く事ができればそれが一番ですが難しいようであれば仲介不動産屋に聞く

のも良いと思います。また不思議なもので自分にとってはその店が新規開業であっても、

前のテナントを知っている顧客からすれば前のテナントのイメージを引きづる傾向があります。

居抜き物件は特にですが内装も何もいじらずにそのまま開業したとしても以前のお店が評判が悪い

と、そのままその印象を引き継いでしまう可能性も高いです。内装屋や業者の意見などを参考に

してイメージ一新の展開を計る事も重要です。

一等立地よりも二等立地を先に見る

安易に好立地=駅前と考えるのは間違いで、特に今後開業をするからには一等立地よりも二等立地

から掘り出していく努力をしたほうが良いかと思います。二等立地のほうが賃料や保証金も低く

設定されている事が多いですし、大通りに面して人通りがあり、視認性が高ければ一等立地以上の

集客力を稼ぐ立地もあります。

データとしても一等立地は二等地より賃料が想像以上に重荷になり、意外に撤退も早く色々な

テナントが出入りしていているケースも多くあります。また初めは二等立地を多く見た方が

テナントを見る眼が養われやすいという利点もあるでしょう。テナント賃料は借りている以上、

毎月支払い続けていくものです。時間をかけてでも自分にとっての最適立地を選択しましょう。

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