葬儀屋の独立・開業・稼ぎ方

葬儀屋の独立・開業・稼ぎ方

今回は葬儀屋の独立・稼ぎ方について書いてみようと思います。

人間誰しもが訪れる「死」。葬儀というのは避けては通れないものです。

以前では100~300万の葬儀が一般的でしたが最近では30~60万の低価格帯の葬儀も主流に

なってきました。高齢化に伴い葬儀ビジネスが注目されているのは以前から変わりませんが、

にも関わらず昔からそのビジネスモデル等には大きな変化はあまり見られません。

またこの業界は特に大手が牛耳っているため新規参入が難しい業界でもあります。参入自体は

特別な許可や資格が必要な訳でもなく、霊柩車の導入等で陸運局への申請が必要な以外は誰でも開業する

事は可能ですが、実際に葬儀ビジネスとして成立させていくには高いハードルがあります。

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死は突然に訪れます。家族の1人が息を引き取ったとしても、遺族はいつまでも悲しみに浸っている訳にも

いかず、遺体の処置や移動・葬儀の準備などを考えなくてはなりません。病院で家族が悲しみに暮れている

時に葬儀屋はそっと声をかけてきます。「ご遺体を運ぶ手はずはお済ですか?」まるで病院関係者の

ように白衣を着て声を掛けてきたその人物は葬儀屋です。人は80%以上が診療所や病院で亡くなって

いると言われています。葬儀屋は病院側に年間数百万~数千万円の費用を支払う事により他業者より

優先して顧客を確保できる事になっています。病院の指定業者になれればどの業者よりも早く顧客に接触

できる事になりますので、葬儀屋としてはこの利権は必ずしも欲しい所です。中には医者等に過度な接待や

多額の寄付金を納めている葬儀屋も多く、葬儀自体の金額が上がりやすいのはこのような無駄な広告活動費が

含まれている事にも起因しています。また葬儀社などは特に大手他社から葬儀案件を紹介してもらうと

仲介手数料を支払う仕組みになっています。その仲介手数料は15%前後が一般的。祭壇料の15%~20%

としても50~60万の仲介手数料が紹介者に支払われる仕組みです。ですから葬儀自体を行わなくても

大手は他社に案件を紹介するだけでビジネス自体は成立する事になります。マージンが横行するのは葬儀社間

だけではなく、例えば戒名なんかも葬儀屋が勧める事が多いものですが僧侶側からバックマージンが支払われて

いるケースもありますし、その他にも生花やテントや花環、料理、返礼品などあらゆるものにマージンが絡んで

きます。

また遺族としても大抵は事前に葬儀をどの業者に任せるか決めている事はほとんどありません。

家族の死を目の当たりにして初めて葬儀をどうすれば良いか、考え始める事がほとんどです。

この辺りもやはり葬儀の値段が吊り上がってしまう原因の1つで、故人が息を引き取る前に葬儀の準備を

しておく事は不謹慎だと考える人が多い事・世間に恥ずかしくない葬儀を行いたいと考える人が多い事・

身内が死亡すると過度なストレスで思考力が極端に減退してしまい余裕を持って葬儀の事まで考えられない事

人の死に直面するのは一生に数回の事で葬儀自体が誰もが不慣れであり、葬儀の相場もわかっていない事など

から、結果的に葬儀社の言うままに話を進めてしまい、後日に想定外の高額な請求がきても後の祭りという

パターンは今も昔もさほど変わりはありません。この事は葬儀屋も当然折り込み済で、病院に遺体がある時点

から納棺を勧めてきたり死装束を売ろうとする・高級な棺を勧めてくる・遺体の搬送費用が高い・抱き合わせ

販売が多い・一式プランとしておきながら飲食・接待代金が含まれていなかったり参列人数によって料金が変わる・

式場無料としておきながら通夜等には別途料金がかかる等、遺族が葬儀について不慣れな事を良い事に不透明な

価格設定で営業をかけてくる葬儀屋も多くいます。また葬儀屋が使用するモノは再利用できるものが多く、祭壇や

受付セット、霊柩車など使い回しが殆どで、その原価率は10~20%といった所でしょう。祭壇などは

その最たるもので昔は祭壇も葬儀が終われば埋葬地まで持っていき破棄する事が普通でした。しかし今では

祭壇も使い回しが普通で、例えば仕入値が200万円の祭壇であっても、1回の葬儀で30~50万円の

使用料がかかる事が通常ですから4~6会程度使い回しをすれば、その後はほぼ全てが葬儀業者の利益となります。

その他の骨壺や棺でさえも原価は数百円~数千円程度のものが多いものですが、それを数万円単位で販売する

というとても純粋に競争原理が働いているとは考えにくい価格設定となっています。逆に言えば葬儀業界は

適性な原価や人件費に基づいて適性価格で商売をすれば、優れたビジネスモデルではなくともそれだけで商売として

成立しそうな気もします。これだけ原価率が低い上に顧客には高額な請求を迫るとなればボッタくりと声があがる

のも不思議ではありません。また遺族も急な葬儀費用に生命保険・定期預金を解約する・クレカ払いが効かない

から急いで現金をかき集める・積み立てたお金も葬儀費用に消えるというように葬儀にかかるお金は高額で融通

が効きずらく、後から請求書が届いた時にその金額に愕然とするケースが非常に多いものです。

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葬儀を行った業者に対しても不満足・金額に納得がいかないという感情を持った遺族が半数以上いたという

データを見ると、いかに葬儀業界自体が不明瞭な価格設定で、その請求の仕方に透明性がないかという事が

伺える気がします。葬儀業者・葬儀業界がブラックボックスと揶揄される事が多いものですが、そろそろこの

風潮にも終止符を打っても良いのではないでしょうか。本当に故人や遺族の事を考えるのであれば

生前に自分のためにお金を使って満足な人生を全うしたいと考える人もいれば、遺族のために少しでも多くの

お金を残してあげたいという人もいるでしょう。会場等の設備投資費や病院等への広告活動費の高さ・下請け・

孫請け業者へのマージン負担など、遺族の葬儀とは全く関係のないコストが、現在の高い葬儀料金に転嫁されて

いるこの仕組みは、現代のシステムにとても馴染むものではありません。

またこれらの改善を葬儀屋だけに期待するのは難しく、遺族側にもあらかじめ葬儀に対しての予備知識を持って

おくという意識は必要かと思います。前もって予備知識があれば遺族や喪主にも業者を選ぶという選択肢が生まれ、

業者の言うままに余計なプランを組む必要もなくなります。いつ訪れるかも分からない家族の死や葬儀に対して

目を背けたくなる気持ちは分かりますが、むしろ本当に満足のいく葬儀を故人の為にあげたいのであれば真剣に

向き合うべきでしょう。また今後葬儀屋を開業するのであれば、本当に遺族が求めるものをシンプルな形で提供する

葬儀屋が必要とされていくように思います。葬儀と言っても一律ではなく身内だけで済ませたいというニーズや

直葬を希望する人・家族葬を希望する人など、遺族によってその希望は様々です。そのような多様なニーズに

合わせた明瞭なプランをシンプルに提供してあげる葬儀屋・当たり前の事を当たり前にやってくれる葬儀屋が

求められていくのでしょう。

また今後は葬儀屋としても顧客に対し葬儀に対しての正しい知識をネット等を通じて積極的にコンテンツを

発信していく事が大切かと思います。どちらかと言えば葬儀業界は閉鎖的でPRや広告活動を積極的に行うと

いった風潮があまり見られません。しかしむしろ逆に葬儀屋として適切なコンテンツを世に発信していく事で

顧客側も葬儀に対して正しい知識を持つようになり、葬儀業者の選択にも幅ができるようになり、ひいては

自社の顧客に結び付く機会となるかもしれません。元々が閉鎖的な業界だからこそ、その壁を破って正しい方法を

説く事自体も差別化の一つとなり、結果的に業界内にも適性な相場が形成されていくと思われます。

また今までは病院側で声をかけられた葬儀屋や信頼できる筋の人に葬儀一式を依頼するといったケースが

多かったように思いますが、新規開業を考えるのであれば事前に予備軍である顧客を取り込んでおく事も検討

しなければなりません。病院では家族が死を迎えたとしても、病院内ではスマホなど携帯電話の使用も禁止

されていますしPC等を開く心の余裕ももちろんありません。そのため故人とお別れを迎えた時点でスマホ等で

葬儀屋を探すといった行動自体が遺族には難しいものです。そのままでは病院の指定業者に顧客を持っていかれる

事は必至で、そうなる前に顧客を取り込んでおく必要があります。大手葬儀会社は生命保険を加入してもらう際に

同時に葬儀社の会員登録を勧めるといった手法を取っている会社もありますが、小規模な業者が同じ手法で対抗

するには難しい部分があります。新規参入会社が事前にやれる事は例えば定年を迎えた中高年者に買い物や温泉等

のクーポン配布をしたりデイサービスの送り迎えをしてあげる等、普段からコミュニケーションを取る事で

潜在顧客にPRしておく事も考えられます。葬儀に備えるという意識が薄い層に自社の葬儀社としての存在を

事前にアピールしておく事で、将来的に万一の時に依頼が舞い込んでくる事にも繋がります。

もしくは普段から葬儀に関しての相談受付やフェアイベントを行い、葬儀に対しての顧客の不明点を解消して

あげる事と併せて会員登録を勧める等の方法もあるでしょう。また今までの葬儀社はプランや料金設定が

不明瞭な点がネックでもあった為に、この部分をどれだけ顧客に分かり易く表示できるかも鍵となりそうです。

また今後は葬儀費用の支払方法にも配慮する必要があります。今まで葬儀には急な現金が必要で遺族がお金の

用意に駆けずり回る事も多かったものですが、今後はクレカ払いや分割払い・paypalなど様々な決済手段を確保

しておく必要があるでしょう。

今まで遺族が身を粉にして働いてやっとの想いで稼いできた大金を、このような不明瞭な葬儀業界の仕組み

のために費やす今までの仕組みは本当に正しいと言えるのでしょうか。それであればそのお金を趣味に費やしたり、

生前に家族で一緒に旅行をしたりといった使い方の方がよほど健全にも思えますし、良い選択肢だと思います。

新規開業を志す葬儀業者は老舗業者から邪魔される事もあるでしょうし、老舗業者と病院側の古くからの

癒着をひっくり返す事は簡単ではないでしょう。しかし宗教と結び付けたような葬儀は今後は減っていく

でしょうし自分たちが希望する形の葬儀にシフトしていく中で、今までの葬儀のやり方がいつまでも

続くとは到底思えません。「高い料金設定=一生に一度のことだから仕方ない」という今までの構図を

見直さなければならない時が来ているような気がします。今後葬儀屋を開業するにあたっては今までの風潮に

流される事なく、本当の意味で顧客の人生の選択肢を広げてあげられるような、本質に見合ったサービスの

提供が求められていく気がしますがいかがでしょうか。それでは今日はこの辺で。

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