蕎麦屋の開業は儲かる?売上やコンセプトなど成功のコツを解説

今回は蕎麦屋の開業について挙げてみたいと思います。

一般大衆に親しまれている蕎麦。

香りや風味、蕎麦の甘みや噛んだ時の弾力は蕎麦の美味しさを引き立てます。

ですが最近では少しずつではありますが蕎麦屋は減少しています。

手打ち蕎麦を始め、同業者間や外食産業の競争激化や客数の減少により段々と蕎麦屋は減りつつあります。

また若者の蕎麦に対する人気は以前よりも低く、またそば屋は後継者不足等の理由で廃業する店舗もあります。

しかし撤退する店舗が多い中、これは今後そば屋を新規開業する人にとっては追い風になる事も考えられ、中には定年退職後に蕎麦屋の開業を志す人も多いようです。

今回はそんな蕎麦屋の開業について触れてみます。

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蕎麦屋を開業するには

蕎麦屋を開業するにはどのような手続き・資格等が必要になるのでしょうか。

幾つか挙げてみます。

 

食品営業許可

蕎麦屋を開業するためには他の飲食と同様、食品営業許可が必要となります。

保健所が求める施設基準に合致しているか検査を受けて、営業許可証を交付された後でなければ営業を開始することは出来ません。

蕎麦屋を開業する際にはあらかじめ保健所の職員に相談をしておきましょう。

 

食品衛生責任者

蕎麦屋のように食品を取り扱う営業の場合、施設ごとに1名以上の食品衛生責任者を設置する必要があります。

通常であれば1日程度の講習を受けることで取得する事ができます。

尚、調理師や栄養士資格を取得している方は食品衛生責任者は不要です。

 

開業届

蕎麦屋開業時には税務署に対して開業届を提出します。

未提出でも罰則はありませんが、開業届を提出することで青色申告ができたり屋号の口座を作れる利点があります。

直接税務署へ提出する他、郵送での提出も可能なので、開業後一か月以内に提出をしましょう。

 

蕎麦屋の開業資金は?

蕎麦屋の開業資金はどれくらいを見込んでおくべきなのでしょうか。

以下で蕎麦屋の開業資金をシュミレーションとして考えてみたいと思います。

 

 開業資金例

※店舗面積:15坪

※設備は中古品を利用

開業資金項目 金額
物件取得費 1300000円
内装工事費 4000000円
厨房設備 2500000円
外装・看板等 400000円
材料 300000円
開業前広告費 200000円
開業前人件費 400000円
雑費・消耗品 150000円
合計 9250000円

 

シュミレーション上では9250000円の開業資金が必要という計算になります(シュミレーションであり実際の開業資金とは異なります)。

 

いわゆる個人店の蕎麦屋であれば、10~15坪ほどの店舗で15~25席程度の店舗も多く、一等地だけでなく住宅街等でも集客は可能なので立地によっては物件取得費を抑える事も出来ます。

また店舗設計では客室と打ち場・厨房のスペースの取り方にも注意が必要です。

蕎麦屋の内装としては庶民的な雰囲気の店舗や和風テイストを感じさせる蕎麦屋が多く、坪25~40万円程の内装工事費は見込んでおいた方が良いでしょう。

 

厨房設備としては茹で麺機、製麺機・ガステーブル、製氷機や冷蔵庫・フライヤー等、専門機器を揃える場合には設備投資が高額になる事はありますが、居抜きや中古機器を購入する事でもコストを抑えることが出来ます。

蕎麦の場合には設備投資が高額になりやすい反面、単価が低く回収期間が長引く可能性もありますので、初期投資が大きくなり過ぎないように注意しましょう。

 

蕎麦屋のコンセプトはどうする?

蕎麦屋を開業する場合、そのコンセプト設計も大切です。

多くの蕎麦屋がある中で、コンセプトを決める事は「あの蕎麦屋は~の味やサービス・価値を提供してくれる」といった明確な訴求ができ、また開業をする上でもその方向性を決める事にも役立ちます。

 

ここでは蕎麦屋で考えられるちょっとしたコンセプトを挙げてみます。

  • 厳選した蕎麦粉を使い、蕎麦本来の甘味と香りを楽しんでもらいたい
  • 夫婦二人で営業する和やかな明るい雰囲気の店内
  • 女性が一人でも来店しやすいメニュー構成
  • 高級蕎麦とは逆に気軽に食べれる価格設定の蕎麦屋
  • 昼間は本格的な蕎麦・夜はお酒やサイドメニューも楽しめる店
  • ヘルシー志向を意識した健康に良い食材を中心に取り扱う蕎麦屋
  • 若年層向けにもお腹一杯になるボリュームのある蕎麦の提供
  • 従来の和風デザインとは異なるスタイリッシュな雰囲気の蕎麦屋
  • 蕎麦や料理を盛る器にもこだわりのあるお店 etc…

 

上記は簡単な一例ですが、蕎麦屋にはこだわりのある店主も多く、そば粉や食材に気を配ったお店が多く見られます。

数多くのお店がある中で、利用客に選んでもらえるような蕎麦屋のコンセプトを考えておきたい所です。

 

蕎麦の原価率はどれくらい?

蕎麦の原価はどれくらいなのでしょうか。

お店によっても蕎麦の価格はそれぞれですが、店舗によって当然に原価のかけ方は違います。

どれくらいの原価がかかっているのか気になる所でもあります。

 

ざっくりと大別すると、そば粉には「国内産」「外国産」があります。

国内産であれば北海道や福井、外国産は中国・アメリカ産が多く、もちろんブレンドもあります。

業務用としては22kgや10kg (小口)~等の扱いがあります。

農林水産省のデータによると国内産の自給率は25%程度。つまりそば粉の75%~は中国・アメリカからの輸入となっています。

 

原価として考えてみると、国内産がキロ1000円~とし、中国等の外国産がその半分のキロ500円程度とします。

1人前で使用するそば粉は100g程度。

そのため国内産の場合には100gで100円~程度、外国産の場合には100gで50円前後の原価と考えられます。

ただしもちろんこれにそばつゆや薬味の材料も加える事になるので、例えば外国産のそば粉を使用した蕎麦であればトータルで60~80円程度の原価になってくるでしょう。

つまり蕎麦が300円とすると、その原価率は60円÷300円=20%程度という事になります。

また一般的な「二八蕎麦」はそば粉8小麦粉2の割合で打った蕎麦ですが、安価な蕎麦などは小麦粉の量を調整する事により更に原価を30~40円程度に落とす事も可能かと思います。

 

ですが食材原価だけでなく、その他にも人件費や賃料・光熱費も加味して考えなければなりません。

立ち食い店の場合は駅ナカなど好立地に店舗を構える事も多く、テナント賃料を考慮するとなおさら薄利で経営をしている事が分かります。

また十割そばなど製法にこだわりのあるお店であればそば粉にコストをかけているでしょうし、手打ちであればその技術料も考慮するべきでしょう。

そのため単純に原価率だけで判断する事はできず一概には言えませんが、経営者としては利益と原価とのバランスはよく検討しておく必要があります。

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蕎麦屋の開業後の売上は?

蕎麦屋の開業後の売上はどれくらいが見込めるのでしょうか。

ここでは厚生労働省の「飲食店営業(そば・うどん店)の実態と経営改善の方策」のデータを元に、売上・利益をシュミレーションとして考えてみたいと思います。

※出典 厚生労働省「飲食店営業(そば・うどん店)の実態と経営改善の方策」より

上記はそば・うどん店の平均客数・平均単価を表したものです。

「そば専門店」と「立ち食いそば店」ではおよそ5倍以上の客数の差が出ている事が分かります。

ここでは端数を捨て、客単価を880円・客数を56人として考えます。

 

 売上条件

  • 客数:56人
  • 客単価:880円
  • 営業日:25日
  • 月商:1232000円(880円×56人×25日=1232000)

 

 経費条件

  • 賃料:130000円(面積:15坪)
  • 人件費:270000円(アルバイト×3名)
  • 原価:308000円(売上の25%)
  • 水道光熱費:86240円(売上の7%)
  • 販管費:49280円(売上の4%)
  • 雑費・諸経費:36960円(売上の3%)

 

売上項目 金額
売上 1232000円
合計 1232000円

 

経費項目 金額
賃料 130000円
人件費 270000円
原価 308000円
水道光熱費 86240円
販管費 49280円
雑費・諸経費 36960円
合計 880480円

 

[売上合計] 1232000円 ー [経費合計] 880480円=351520円

シュミレーション上では351520円の営業利益が見込める可能性があります。(※償却前。シュミレーションであり実際の収支とは異なります)

 

実際に多くの蕎麦屋では売上減少に苦しんでいる店舗が多くあります。

原材料の高騰や客単価が落ちている事・店舗の老朽化や後継者不足など、様々な原因により経営が悪化している傾向があります。

また大手チェーン店の数も増えている事から、個人店としては尚更独自のメニュー開発や素材の良さをアピールしていく必要があるでしょう。

今後蕎麦屋を開業するにあたっては、目指すお店の姿を明確にし他店との差別化を図っていかなくてはなりません。

 

手打ち蕎麦屋は儲かる?

これから蕎麦屋を開業したいという方の中には、手打ちでの蕎麦屋を検討している人もいるかもしれません。

手打ちの蕎麦屋は儲かるのでしょうか。

 

もちろん開業をするからには利益度外視で自分の好きなようにやるべきとは思いますが、個人的にはあまり手打ち蕎麦が儲かるとは思えません。

まず手打ちの場合には生産量に限界があります。

通常の個人店であれば店主が一人で作業をするかと思いますが、生産に限度があるため売り切れ等で顧客を逃してしまい機会損失に繋がる可能性もあります。

そのため売上としても頭打ちになっていく事もあるでしょうし、手打ちだからと言って極端に単価が上がるとも思えません。

 

また若いうちはまだしも、定年以降の年齢で毎日手打ちをしていると、いずれは肉体的な限界が見えてくる事もあると思います。

手打ちでは蕎麦を挽き、蕎麦粉をこね、のし棒を使って蕎麦の生地を伸ばし、生地を包丁で裁断するという一連の流れは相当な体力仕事です。

また朝早くから仕込みに入るお店も多いため家族の助けが必要な場合も多いでしょう。

営業時間内だけならまだしも閉店・開店前から作業をしているとなると身体が持たなくなる事もあるかもしれません。

睡眠時間を削りながらやるとなれば負担はかなり大きくなりますし、そのために営業時間を減らすようでは本末転倒になってしまいます。

 

また現在では製麺機もかなり性能の良いものが出ています。

それこそ手打ちに負けない位の作業をしてくれる機械もあります。

特に機械製麺は手打ちより量産性に優れていますので、どちらかと言えば客数が多く単価の低い店に向いています。

多少の設備投資費はかかっても、今後さらに機械化が進んでいけば手打ちの価値が疑問視されてくる事もあるのかもしれません。

 

また顧客側の立場からしてみれば、手打ちにこだわるお客さんがどれだけいるのかという点もあります。

むしろ美味しければどちらでも良いという顧客も意外に多いのではないでしょうか。

確かに手打ち蕎麦はとても美味しいものですが、機械打ちでも美味しいお蕎麦はたくさんありますし、そもそも蕎麦粉が美味しくなければ手打ちしても美味しくはありません。

もしくは「手打ち」と名乗っていても、全ての工程を手作業でやっているのかはお店によっては疑問な部分もあります。

 

もちろん手打ちの技術や知識が必要ないという訳ではなく、例え機械打ちをする蕎麦屋であっても手打ちの知識は必要になるかと思います。

そのため手打ち蕎麦屋を開業する場合であっても、肉体的な負担や日々の生産量を考慮して、手打ちと機械打ちのバランスを調整していく事が大切なように思います。

 

脱サラで蕎麦屋を開業するのはなぜ?

脱サラで中年男性が蕎麦屋を開業するという話は珍しい話ではありません。

会社を途中退職してまで蕎麦屋を始めたり、定年退職後に蕎麦屋を開業する人は多くいます。

特別に儲かりやすい業態ではありませんし、低資本で開業できるものでもありません。

数ある飲食店がある中で、なぜ脱サラをしてまで蕎麦屋を始めるのでしょうか。

 

脱サラをしてまで開業したい想いとして、まずは蕎麦職人への憧れが考えられます。

蕎麦は職人業と言っても良いほど日本の伝統的な食であり、多くの人に愛されています。

また蕎麦では「木鉢三年・のし三ヶ月・包丁三日」といった言葉もある位、一人前になるには時間がかかります。

例えば蕎麦粉と水の割合や天候や気温・湿度等によっても微妙に味が変わるため、安定した蕎麦の味を提供するには長年の経験が必要です。

脱サラをしても現役のように蕎麦職人として働きたいという強い想いがあって開業に踏み切る人もいるのでしょう。

普段から毎日デスクワークに慣れたサラリーマンが、全くの別世界である職人の世界へ足を踏み入れたくなる気持ちも何となく分かるような気もします。

 

また「蕎麦を打つ」あの姿に憧れを持ってしまう男性も多いのでしょう。

店主が店前で蕎麦を打つ姿は何とも独特の空気があり「職人」を感じさせます。

蕎麦屋の中には作業場の前面をガラス張りにして手打ち作業が外から見える店舗もありますが、その動きからはパフォーマンス性も感じ、無駄のないその動きや所作に魅了される人も多いのかもしれません。

 

また蕎麦屋は他飲食店と比較しても、「開業しやすい」というイメージを持っている人が多いようにも思います。

例えば寿司屋で言えば長い板前修業が必要と言われますし、フレンチ等でもシェフとして多くの経験が必要です。

蕎麦屋でも修行をする人は多いですが独りからでも始める事も出来ますし、趣味で自宅で蕎麦を作っている人もいる事でしょう。

それこそ今では調理学校や開業を前提としたスクールもあります。

または成功のために試行錯誤するその日々の努力・過程さえも、脱サラ組は蕎麦屋開業の魅力の一つとして感じているのかもしれません。

 

若年層・女性客の取り込みを

蕎麦屋の集客手段と言えばどのような方法を思い付くでしょうか。

恐らくはチラシやビラ配り・呼び込み・フリーペーパー・クーポン配布等が挙げられるでしょうか。

確かに蕎麦屋の商圏はさほど広いとは言えず、これらの集客方法も有効なのかもしれません。

 

ですが現在の蕎麦屋は客数の減少に悩んでいる店が多く、集客数を増やすには若年層や女性層も外すことはできません。

その為にも今までのようなアナログ集客だけでなく、WEB集客等も考える必要があるように思います。

 

例えば先ほどと同じく厚生労働省のデータを元にすると、およそ62.5%の店舗がPCさえも導入していない事が分かります。

個人経営店においては7割近い店舗がPCも導入していません。

現在の飲食店ではPCはおろか、スマホやSNSでの集客に注力している店舗も多いものです。

確かに蕎麦屋の経営者や従業員の年齢層は上がってきており、また職人肌の方はWEB系の集客が苦手なイメージもあります。

 

もちろん集客方法に変えた所ですぐに業績が改善されるとは限りませんが、少なくともWEB媒体を取り入れる事で社会的ニーズや若者・女性の趣向・他店の集客方法や客層の好み等、様々な面が把握しやすくなる部分はあるように思います。

今後は多様なニーズに対応するためにも、情報化への対応は必須になってくるのではないでしょうか。

 

蕎麦屋の開業まとめ

蕎麦屋の開業について幾つか挙げてみました。

蕎麦屋は日本では伝統食として知られ親しまれている反面、一方でそこを抜け出せずに旧体質のまま経営を続けている店舗が多く残っています。

また今後は客数の減少は元より、施設の老朽化や人材難・材料費の高騰などにより、更に苦しい経営が予想されます。

ですが古い体質の業態だからこそ、まだまだ改善の余地が残っているとも考えられます。

蕎麦屋の職人としてのこだわりを残しつつも、経営者として取り組むべき課題は多く残されています。

今後の新しい蕎麦屋の誕生に期待していきたいですね。

それでは今日はこの辺で。

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